スーパーノヴァ  ©2020 British Broadcasting Corporation, The British Film Institute, Supernova Film Ltd.

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2021.7.01

スーパーノヴァ

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

20年来のパートナーであるピアニストのサム(コリン・ファース)と作家のタスカー(スタンリー・トゥッチ)は、キャンピングカーで2人の思い出が詰まったイギリス・湖水地方の旅に出る。無償の愛を貫いてきた2人だが、タスカーは認知症になり、記憶と能力を失い始めていた。

身の回りのことさえ自分でできなくなると死を選択しようとする男とそれを望まない男が、死を前にして一つの究極の愛を紡ぎ出す。ゲイのカップルだが、同性愛には一切フォーカスしないことで、性的指向を超えた普遍的な愛を描き出した。今の時代だからこその形ともいえるだろう。森や湖、なだらかな丘陵など豊かな自然を見渡すように捉えた映像の美しさが、2人の思いの純度を際立たせた。愛の喪失や相手への敬愛の念が深いだけに、美しいセリフの数々にも目を見張る。濃密な舞台劇を見ているようなトゥッチとファースの演技も見どころだ。ハリー・マックイーン監督。1時間35分。東京・TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマほか。(鈴)

異論あり

 ロードムービーなのに、動きの少ない対話劇というのが珍しい。それでも、車外の景色と2人の心情は移ろって、静かに劇的ではある。地味でカタルシスのない展開は映画祭かアカデミー賞かという風情で、文学的ドラマをじっくり見たい人にはお勧め。(勝)

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