チャートの裏側

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2021.2.11

チャートの裏側:独自企画、重要性と難しさ

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

チャート内の邦画実写劇映画5本のうち、4本が原作ものではなくオリジナル企画である。邦画は知名度が比較的高く、それに伴い集客面でも有利な原作ものに頼りやすい。作品の多様性が必要な点からもオリジナル企画は重要だ。と同時に、作品のかじ取りもなかなかに難しい。

その一本、10位発進の「哀愁しんでれら」は、残念ながら苦戦を強いられた。期待はあった。予告編を見た限りでは、軽妙かつブラックコメディー風な趣に、興行の可能性を感じたからだ。ところが、映画は違っていた。現代のシンデレラ風物語に、先の要素は希薄だった。

となると、問題は中身だ。これがまた、一筋縄ではなかった。「哀愁」を超えた主人公の逆境の道筋が、かなり意表をつく。ただ、共感度が弱い。ここの肉付けが、もっと緻密にできていればと思った。観客が置き去りになっていく気もした。これは興行上の問題とも言える。

3位発進の「樹海村」は、さすがに手慣れている。昨年のヒット作「犬鳴村」(最終興行収入は約14億円)に続くオリジナルホラーだ。ひたすら怖い。日本的な怨念(おんねん)が、まさに背後霊のようにへばりつく。ただ、「犬鳴村」より数字はかなり下がった。観客の関心は、すぐに移り行く。さらなるホラーの新機軸も必要ではないだろうか。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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