「チャートの裏側」映画評論家の大高宏雄さんが、興行ランキングの背景を分析します

「チャートの裏側」映画評論家の大高宏雄さんが、興行ランキングの背景を分析します

2021.7.01

チャートの裏側:洋画ヒットの定石いかに

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

なかなか、洋画の興行が回復しない。昨年7月から今年6月にかけて公開された洋画で、興行収入10億円以上は2本のみ。昨年の「TENET テネット」(27億5000万円)と今年の「映画 モンスターハンター」(推定12億4000万円)だ。これは、ちょっとした驚きではないか。

この6月、話題作の「モータルコンバット」や「クワイエット・プレイス 破られた沈黙」も、思うような集客を果たせない。前者は人気ゲームソフトの実写版、後者は米国大ヒットのホラー続編だが、これはコロナ禍の興行事情というより、日本独特の傾向もあるとみる。

例外の作品を除き、洋画はディズニーなどのアニメーションや人気シリーズものが興行上位を占める。先に挙げた2本は、そのような作品ジャンルではない。日本人俳優が出演していても(前者)、よくできたホラーでも(後者)、平常時であろうが興行は厳しくなったと思う。

映画館の休業が長引いた米映画界の過酷さは、日本以上だった。そこから大作延期が相次いだ。それはくしくも、邦画よりも特定ジャンルの作品にヒットが偏りがちな洋画事情をあからさまにしたとも言える。「ゴジラvsコング」が公開されたばかりだ。洋画ヒット確約の部類に入る作品だが、定石どおりになるのかどうか。注目したい。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)