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2022.10.02
大人になったジョーイ・キングの新境地に見ほれる「ザ・プリンセス」:オンラインの森
ジョーイ・キングがいつの間にか23歳になっていた。1999年生まれだから当然23歳に決まっているのだが、なにせ年齢がひと桁の頃から活躍している名子役である。「ラブ・アゲイン」も「ダークナイト ライジング」も「ホワイトハウス・ダウン」も「死霊館」も、あとになってから「ああ、あの子供もジョーイ・キングでしたか」と気づくくらい、あちこちに顔を出していた。
それが現在公開中のアクション大作「ブレット・トレイン」では、ブラッド・ピットを手玉に取る邪悪女子、プリンス役を演じていて、こんな大人になったのかと驚いた。さらにディズニープラスで配信されている「ザ・プリンセス」では、いかにもディズニー調なおとぎ話を逆手に取った武闘派プリンセスを大熱演。主演だけでなく製作総指揮も務め、危険なスタントのほとんどを自分で演じたというからさらに驚く。
ディズニープリンセスをパロディーにして、武闘派のお姫さまが王国の危機に立ち向かう
「ザ・プリンセス」は、お城の高い塔に閉じ込められたお姫さまが目を覚ます場面から始まる。着ているのはウエディングドレス。どうやら何者かに監禁されて、ムリヤリ結婚させられようとしているらしい。しかし、ひそかに戦士としての修行を積んできたお姫さまは、指の関節を外して拘束から逃れ、様子を見に来た兵士を返り討ちにして、血しぶきを浴びながら迫りくる刺客たちを倒していくのだ!
配信しているのはディズニープラスで、あからさまにディズニープリンセスのアニメーション作品をパロディーにしているが、製作したのはディズニーに買収される前の20世紀FOX。同業他社のお家芸をネタにして、可憐(かれん)なはずのお姫さまが王国の危機に立ち向かう姿を「ザ・レイド」ばりのワンシチュエーション・アクション映画に仕立てあげている。
女たちが男性社会に立ち向かう、清々しくもハードなアクション映画
多くのアクションものでは、最終決戦で大ボスが待ち受けるのは高いところと相場が決まっている。しかし本作では、両親である王と王妃を救うために、一段一段下へと降りていく移動の逆転現象が面白い。邪悪な敵と対峙(たいじ)するために、わざわざ下から上ってやる必要はない。ぶっ倒してやるから首を洗って待っていろと言わんばかりの猛々(たけだけ)しさが実に頼もしい。
邪悪な敵は、ドミニク・クーパー演じる王位を狙う貴族だけでなく、旧来続く家父長制そのものでもある。愛する父王でさえ、後継者の男子を迎えるために娘の結婚を望んでいる。しかし本作のジョーイ・キングは、男たちからどれだけ侮られても、そんなのは慣れっこだと言い放ち、傷だらけになっても決して反撃をやめない。主人公だけではない。お姫さまに武術を教えるのも女性だし、クライマックスでは幼い妹も思わぬ活躍を見せる。清々(すがすが)しいくらい明快に、女たちが男社会に立ち向かう映画になっているのである。
決して深刻にテーマを掘り下げるタイプの作品ではないし、思いのほかハードなアクション描写は幼い子供向きではないかもしれないが、おとぎ話のお姫さまとアクションスターをみごとに融合させたジョーイ・キングの挑戦は、きっと新しい世代の子供たちをエンパワーメントするに違いない。
「ザ・プリンセス」はディズニープラスのスターで独占配信中