子供はわかってあげない ©2020「子供はわかってあげない」製作委員会 ©田島列島/講談社

子供はわかってあげない ©2020「子供はわかってあげない」製作委員会 ©田島列島/講談社

2021.8.19

特選掘り出し!:子供はわかってあげない されどまぶしい夏の恋

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

高校2年の美波(上白石萌歌)は、部活もクラスも違う門司(細田佳央太)が自分と同じアニメのファンと知り意気投合。彼の家を訪ねると、幼い頃に家を出て顔も行方も分からない父の手がかりを見つける。母と新しい父、その2人の子である弟と仲良く暮らしている美波だが、実の父の居場所を突き止め、家族には内緒で会いにいく。人気急上昇中の漫画家、田島列島のデビュー作が原作だ。

放課後の喧騒(けんそう)、プールの匂い、ゆるく流れる時間。一見、普通の高校生の爽やかな夏の恋の物語だ。でも彼女たちの周りには、生き別れた父、怪しげな宗教、見た目は女性の門司の兄(千葉雄大)など、ややこしそうな事情がある。くだらない会話で屈託のない笑顔を見せる一方、美波はそんな大人たちの事情を察し、距離をはかりながら接していると見て取れる。

また、母(斉藤由貴)や血のつながらない父(古舘寛治)、門司の兄ら各登場人物からも、何気ない場面で、言葉にはしない心の奥やそれぞれのドラマが伝わってくる。人生、実はいろいろある。それを知らないわけじゃない2人のラストシーンがまぶしすぎる。沖田修一監督。2時間18分。東京・テアトル新宿、大阪・テアトル梅田ほか。(久)