© 2019 KOREAN FILM COUNCIL. ALL RIGHTS RESERVED

© 2019 KOREAN FILM COUNCIL. ALL RIGHTS RESERVED

2021.3.04

野球少女

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

134㌔の快速球を投げ、天才野球少女として脚光を浴びたチュ・スイン(イ・ジュヨン)は高校野球界で唯一の女子部員。プロ入りを夢見てトライアウトに申し込むが、ことごとく門前払いに。新任コーチのジンテ(イ・ジュニョク)は、そんなスインの情熱に心動かされていく。

韓国に実在した女子野球選手をモデルにした青春スポーツ映画だ。女子だから、前例がないからという理由で行く手を阻まれる主人公が、それでもひたむきに夢を追う姿を映し出す。水島新司の「野球狂の詩」のような破天荒な面白さはなく、いたって真面目な作り。少女の挫折と成長を軸にした普遍的な物語はきちんと描かれているものの、あえて野球を題材にした作り手の狙いが見えてこないのが惜しい。しかしNetflixのドラマ「梨泰院クラス」で注目されたイ・ジュヨンは抜群の存在感。不器用だがまっすぐに信念を貫く主人公を、静かな気迫をみなぎらせて体現した。チェ・ユンテ監督。1時間45分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・あべのアポロシネマほか。(諭)

ここに注目

スインが夢に向かって挑む姿が実にさわやか。野球への思いがピンとしていてブレることがない。コーチや友人らにもたれかかることもなく、ベタつかない。その距離感を生み出したのは脚本と演出の力だろう。ひたむきになるほど、熱いエールが観客の中で増幅されていくのだ。(鈴)