「百花」©2022「百花」製作委員会

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2022.9.09

百花

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

母百合子(原田美枝子)と息子泉(菅田将暉)との間には、以前母が起こしたある事件で互いの心に溝が横たわっていた。ある日突然、百合子が「半分の花火が見たい」と言って認知症を発症する。百合子が記憶を失うたびに、泉は母との思い出をよみがえらせていく。

ゴツゴツとした歯ごたえあるチャレンジングな作品だ。ワンシーンワンカットは序盤はやや無理が目立つが、終盤に向かうほど結実。いわゆる〝認知症の映画〟という枠からもいい意味で逸脱し、一人の女性の生々しい生の瞬間と喪失のはかなさに迫った。母の胸にずっと生き続けてきた目に見えないものを映し撮ろうと真正面から挑み、これまでにない女性映画になった。

認知症になった母を一人の女性として見つめた短編ドキュメンタリー映画「女優 原田ヒサ子」を監督した原田だからこそ踏み込めた。川村元気は演出へのこだわりとキャスティングで監督としての懐の深さをうかがわせた。1時間44分。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(鈴)

ここに注目

母への葛藤が和らいでいく泉の心の動きや、記憶を失いながらも息子への愛を貫く百合子の切実さに触れ、親子とは何かを考えさせられた。母と息子の何気ない日常や夫婦の会話からふとした思い出がよみがえり、しまい込んでいた記憶を取り戻したような感覚を味わえるはずだ。(倉)

百花

レコード会社に勤務する葛西泉(菅田将暉)と、ピアノ教室を営む母・百合子(原田美枝子)。
ふたりは、過去のある「事件」をきっかけに、互いの心の溝を埋められないまま過ごしてきた。
そんな中、突然、百合子が不可解な 言葉を発するようになる。
「半分の花火が見たい・・・」
それは、母が息子を忘れていく日々の始まりだった。
認知症と診断され、次第にピアノも弾けなくなっていく百合子。やがて、泉の妻・香織(長澤まさみ)の名前さえ分からなくなってしまう。皮肉なことに、百合子が記憶を失うたびに、泉は母との思い出を蘇らせていく。そして、母子としての時間を取り戻すかのように、泉は母を支えていこうとする。
だがある日、泉は百合子の部屋で一冊の「日記」を見つけてしまう。
そこに綴られていたのは、泉が知らなかった母の「秘密」。あの「事件」の真相だった。
母の記憶が消えゆくなか、泉は封印された記憶に手を伸ばす。
一方、百合子は「半分の花火が見たい…」と繰り返しつぶやくようになる。
「半分の花火」とはなにか?
ふたりが「半分の花火」を目にして、その「謎」が解けたとき、息子は母の本当の愛を知ることとなる―――

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