「寄生獣 -ザ・グレイ-」より  © 2024 Netflix, Inc.

「寄生獣 -ザ・グレイ-」より  © 2024 Netflix, Inc.

2024.4.10

人気漫画「寄生獣」が韓国でドラマ化! テンポの良さ、スピード感あるアクションに圧倒される「寄生獣 -ザ・グレイ-」:オンラインの森

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、村山章、大野友嘉子、梅山富美子の4人です。

梅山富美子

梅山富美子

岩明均による人気SF漫画「寄生獣」が、韓国ドラマとなり「寄生獣 -ザ・グレイ-」(全6話)のタイトルでNetflixにて配信中だ。日本で2014年に実写映画化されてから10年、人間と寄生生物を巡る新たな物語が誕生した(以下、本編の内容に触れています)。
 


「新感染 ファイナル・エクスプレス」のヨン・サンホが監督・共同脚本

 パニックアクション映画「新感染 ファイナル・エクスプレス」のヨン・サンホが共同脚本と監督を務めた本作は、人間の脳を乗っ取り支配する正体不明の寄生生物によって未曽有の脅威に世界の人々が直面するなか、寄生生物に完全に乗っ取られなかった孤独な女性スイン(チョン・ソニ)と、半グレ組織から追われる身となったガンウ(ク・ギョファン)を中心とした物語が展開する。
 
寄生生物〝ハイジ〟と共存することになったスインは、変種として人間と寄生生物どちらからも危険視され、命を狙われる。寄生生物を駆逐しようとする人間、人間社会の支配を狙う寄生生物の壮絶な戦いにスインは巻き込まれていく。
 
日本でも山崎貴監督、染谷将太主演で実写映画化された2部作の「寄生獣」は、原作とは違う部分もありつつも、右手に寄生生物〝ミギー(声:阿部サダヲ)〟に寄生された泉新一の物語というの大筋は同じだった。
 
海を渡り実写化された「寄生獣 -ザ・グレイ-」は、原作の寄生生物の設定はそのままだが、舞台は現代の韓国で、主人公が寄生される部分が右手ではないなどオリジナルの物語に。冒頭のシーンから、EDMフェスティバルで寄生生物に寄生された人間が暴れ回り、主人公スインは瀕死(ひんし)の状態から寄生生物に寄生され……と第1話からテンポよい展開に圧倒される。
 
さらに、日本版では、パラサイト役の東出昌大やピエール瀧の張り付いた笑顔がインパクトたっぷりだったが、韓国版のパラサイトたちは無表情なのが印象的。そのぶん寄生されていない人間は感情豊かで、極限状態のドラマが見応えたっぷり。
 
過去のできごとにとらわれるスイン、これまでさまざまな問題から逃げてきたガンウ、スインを守りたいキム刑事、執拗(しつよう)なまでに寄生生物を追い詰める寄生生物専門班「ザ・グレイ」の射撃チーム長ジュンギョンと、それぞれが行動する理由がしっかりと描かれており、物語にぐいぐいと引き込まれていく。
 
また、ヨン・サンホ監督ならではのスピード感あふれるアクションは見応え十分。寄生生物と人間の戦い、寄生生物同士の戦い、ガンウの逃亡劇は息つく暇も与えず、「AKIRA」のバイクシーンを意識した場面もあり、スインを移動させる第4話のシーンは緊迫感が最高潮に達する。
 

日本版との演出の違いや驚きのキャスティングにも注目

 監督とキャストの手腕によって力強い作品に仕上がっているが、新しい物語であるがゆえに「寄生獣」の魅力の一つである、人間と寄生生物(新一とミギーのような)の軽快な会話がなかったのは寂しさもある。
 
原作と日本実写版では、軽快なやり取りのなかで、ミギーが人間の命はなぜ尊いのか、など新一に人間の価値についての疑問を投げかけるのだが、読者や観客にも問うような鋭さがあったように感じる。これは新一役の染谷、ミギーの声を担当した阿部の演技のたまもので、ほかに、人間という生き物を研究し理解しようとするパラサイトの田宮良子役の深津絵里の演技は真に迫るものがあった。
 
一方で韓国版は、自分を卑下して孤独に生きるスインが、ハイジによって独りぼっちではないことに気づくという救いを描く。人間同士でさえ、生き方や考えが違って共存することが難しいはずだが、会話も意思疎通も難しいスインとハイジは、お互いの生存のために奇妙な関係を築き、ハイジは人間という生き物を理解しようとする。どちらかが生き延びてどちらかが滅びるのではなく、お互いのために共存できるという可能性を示したのは、ミギーと新一の関係につながるものがある。
 
(以下、本編視聴後に読むことをお勧めします)
 
ちなみに最終話(第6話)のラストでは、ジュンギョンのもとに、寄生生物に詳しいルポライターがやってくる。その人物とは、原作主人公・泉新一で、演じているのはまさかの菅田将暉。あっけにとられる幕切れで、今後の物語を匂わせる演出がニクい。もしも続編が制作されるならば、新一とスイン、そしてミギーとハイジの対決か共闘か、はたまた新たな変種の登場か……と期待してしまう。
 
「寄生獣 -ザ・グレイ-」はNetflixで独占配信中

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ライター
梅山富美子

梅山富美子

うめやま・ふみこ ライター。1992年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映像制作会社(プロダクション・マネージャー)を経験。映画情報サイト「シネマトゥデイ」元編集部。映画、海外ドラマ、洋楽(特に80年代)をこよなく愛し、韓ドラは2020年以降どハマり。