「イカゲーム」より

「イカゲーム」よりNoh Juhan Netflix

2024.12.07

<一部ネタバレあり>世界が熱狂!「イカゲーム」 続編配信前にシーズン1をおさらい!

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、大野友嘉子、梅山富美子の3人に加え、各ジャンルの精鋭たちが不定期で寄稿します。

梅山富美子

梅山富美子

世界を熱狂させたNetflixシリーズ「イカゲーム」(2021年)の続編となるシーズン2が、12月26日からNetflixで配信される。シーズン2の配信を前に、世界で最も視聴された(※)シーズン1を振り返る(一部シーズン1のネタバレあり)。


多額の賞金を懸け、壮絶なゲームに参加する人たち

本作は、多額の賞金を懸けて、生きるか死ぬかの壮絶なゲームに参加した人間の欲望を描く。借金を抱えながら自堕落な生活を送る中年のソン・ギフンは、駅で謎の男に「数日で大金が稼げる」という誘いを受ける。突然のことに怪しむが、元妻と暮らす娘の親権のため、話に乗ってしまう。

ギフン以外のゲームの参加者もまた、脱北者、韓国に出稼ぎにきたパキスタン人、余命わずかな老人、半グレ、そしてエリートだと思われていたギフンの幼なじみサンウなど老若男女全員ワケあり。

最初のゲーム「だるまさんがころんだ」では、巨大な女の子の人形が「だるまさんが転んだ」と言って振り返るのだが、振り返っている間に動いてしまった参加者がいきなり射殺される。パニックとなり逃げ回る参加者は、センサーに感知されて容赦なく殺される。ゲームをクリアできなければ死が待ち受けることを知ったギフンらは、時に協力し合い、時に裏切り裏切られながら、必死に生き残ろうとする。

ゲーム自体は、「だるまさんがころんだ」「カルメ焼き」「綱引き」「ビー玉」など、子どもがするような遊びでシンプル。ただ、その〝遊び〟に命がかかっていると話は別。ほかの参加者を犠牲にするゲスな者も後を絶たず、1対1で戦うこともあればチームで戦うこともあり、ゲームとゲームの間でも駆け引きが行われ、一瞬たりとも気が抜けない。崖っぷちに立たされた人間が、あの手この手を使って死闘を繰り広げるむき出しの人間模様に引き込まれていく。

さらに、ゲームの様子をモニターで見守る仮面の男、失踪した兄を追ううちにゲームが行われている施設に潜入する警察官の物語も絡み合う。中盤から後半にかけてはゲーム自体の謎に迫るサスペンスやミステリー要素も加わり、ボリュームたっぷりの内容。全9話のなかで、飽きを感じさせない濃い構成も魅力の一つだ。


キャッチーなビジュアルもヒットの要因か

デスゲームを題材にした映像作品は少なくないが、「イカゲーム」がヒットした要因は、手に汗握るストーリーはもちろんのこと、キャッチーなビジュアルが大きく影響していることは間違いないだろう。

緑のジャージーを着たゲーム参加者、顔に丸、三角、四角のいずれかが描かれたマスクにピンクのつなぎを着たスタッフ、仮面の男たちが印象的。監督のファン・ドンヒョクがこだわったというセットも壮観で、「だるまさんがころんだ」の人形、マウリッツ・エッシャーのだまし絵を連想させる廊下と階段、参加者たちが寝るために何百とベッドが並ぶ空間など、非日常が広がる世界観に引き込まれ、どっぷりと物語に没入できた。

キャストたちもこれ以上ないほどハマり役ばかりだった。主人公のギフンを演じたのは、「新しき世界」などで知られるイ・ジョンジェ。緑のジャージーに身を包み、汗をかいて髪を振り乱し、カルメ焼きを必死になめる姿は視聴者に強烈な印象を与えた。この演技で世界を驚かせ、スターウォーズドラマ「スター・ウォーズ:アコライト」(24年)にも出演を果たした。

ほかにも、ゲームで冷徹な一面を見せるサンウ役でパク・ヘス、気性が激しく場をかき乱すハン・ミニョ役でキム・ジュリョン、他人を利用して勝ち残ろうとする半グレのチャン・ドクス役でホ・ソンテ、脱力系女子ジヨン役でイ・ユミ、ギフンをゲームに招待した男役でコン・ユ、警察官ファン・ジュノ役でウィ・ハジュンが出演した。ちなみに、家族のためにお金が必要な脱北者セビョク役のチョン・ホヨンは、本作が俳優デビュー作だった。


メルボルンで展開されている「イカゲーム」とお菓子のオンパッケージのコラボレーション=梅山富美子撮影

シーズン1では賞レースを席巻、オーストラリアでは続編とのコラボ展開も

シーズン1は瞬く間に話題沸騰となり、第74回プライムタイム・エミー賞では、ファン・ドンヒョク監督が監督賞(ドラマシリーズ部門)、イ・ジョンジェがアジア人初の主演男優賞(ドラマシリーズ部門)を獲得。第28回全米映画俳優組合賞(SAG賞)テレビ部門で、スタント・アンサンブル賞、イ・ジョンジェが男優賞、チョン・ホヨンが女優賞を受賞し、その年のハロウィーンには、K-POPアイドルや海外セレブなど、多くの人が本作のキャラクターのコスプレをした。

ちなみに、筆者が住むオーストラリアでは、シーズン2の配信を前にポテトチップスのブランド「スミス」と「イカゲーム」のコラボ商品が発売されている。やはり、「だるまさんがころんだ」の人形と、ピンクのつなぎのゲームスタッフのビジュアルはインパクト大で、作品を超えたアイコンになっているようだ。

シーズン2は、ファン・ドンヒョク監督が再び監督を務め、主演のイ・ジョンジェ、警察官役のウィ・ハジュン、ギフンをゲームに招待した謎の男役のコン・ユ、シーズン1の最終回で役が判明したイ・ビョンホンらが引き続き出演。新キャストには、イム・シワン、カン・ハヌル、パク・ギュヨン、イ・ジヌク、パク・ソンフン、ヤン・ドングン、カン・エシム、イ・デビッド、チェ・スンヒョン(元BIGBANGのT.O.P)、ノ・ジェウォン、チョ・ユリ(元IZ*ONE)、ウォン・ジアンが名を連ねる。

前作の製作時にストレスで歯が8~9本抜けたというファン・ドンヒョクが再び監督を務める。大ヒットのプレッシャーもあったはずだが、シーズン2で世界を再び驚かせるのか、24年を締めくくるのにふさわしい作品であることに期待したい。

※配信開始から1カ月で1億4200万世帯が視聴した。

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ライター
梅山富美子

梅山富美子

うめやま・ふみこ ライター。1992年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映像制作会社(プロダクション・マネージャー)を経験。映画情報サイト「シネマトゥデイ」元編集部。映画、海外ドラマ、洋楽(特に80年代)をこよなく愛し、韓ドラは2020年以降どハマり。

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