「シティーハンター」より © 2024 Netflix, Inc.

「シティーハンター」より © 2024 Netflix, Inc.

2024.4.22

原作の良さと現代の価値観が融合、ハイブリッドな鈴木亮平主演版「シティーハンター」:オンラインの森

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、大野友嘉子、梅山富美子の3人に加え、各ジャンルの精鋭たちが不定期で寄稿します。

ひとしねま

須永貴子

Netflix映画「シティハンター」の配信が4月25日()よりスタートする。原作の「シティハンター」は、1985年から91年にかけて「週刊少年ジャンプ」に掲載された、北条司の連載コミックだ。東京・新宿を拠点に、裏社会でのトラブル処理を請け負う超一流のスイーパー(始末屋)、〝シティーハンター〟こと冴羽獠の活躍を描く(以下、本編の内容に触れています)。
 


鈴木亮平の徹底した役作りへの信頼感

 本作は令和の歌舞伎町を舞台に、原作にはない、冴羽獠と相棒・槇村香の出会いを描くオリジナルストーリーになっている。新宿で謎の暴力事件が多発する中で、獠は相棒の槇村秀幸(香の義兄)と有名コスプレヤー・くるみの捜索依頼を請けった。捜索の途中で槇村が、事件に巻き込まれて死亡してしまう。現場に居合わせた香は、兄の死の真相を調べてほしいと獠に懇願する、獠は香を巻き込まないために避け続けるが……。
 
主人公の冴羽獠に鈴木亮平のキャスティングがアナウンスされたときに、この映画の成功を確信した。原作もののキャラクターや実在する人物に対する、鈴木の徹底した役作りには信頼しかない。「HK 変態仮面」、「物語!!」、「天皇の料理番」、「西郷どん」での激しい肉体改造は、彼の健康状態が心配になるほどの徹底ぶりだった。
 
鈴木はインタビューで「獠の横顔が重要」「顎(あご)の輪郭線が出ないと冴羽獠にならない」と語っている。その輪郭線を出すために体を絞りつつ筋肉をなるべく落とさないようにして、シャープに戦える体を目指したという。その引き締まった体はジャストサイズのニットごしにもわかるが、パンイチで目覚めるシーンや、ショーパブのような場所でのビキニパンツ姿での「もっこりショー」でも明らかだ。
 
この「もっこり」が、本作を実写化する上ではかなり〝取扱注意〟の要素だったと思われる。獠は〝無類の女好き〟で、原作漫画ではセクシーな美女を前にすると股間が反応し、ありえない大きさに肥大化する。約35年前の漫画ではアリだったコミカルな描写は、令和が舞台の映像作品では賢明にデリートされている。
 
その代わりというべきか、冴羽獠は登場シーンで、ベートーベン交響曲第九番にのせて「もっこり」ソングを歌っている。「もっこり」はもはや記号でしかないので下品さは感じない。先の「もっこりショー」も、股間がまったくもっこりしていないので気まずさはゼロ。アキラ100%なかやまきんに君ら芸人たちへのリスペクトが感じられる「裸踊り」は必見だ。
 
もっこりソングの歌詞と裸踊りの振り付けは、鈴木亮平によるものだとか。また、任務中に魅力的な女性に体がついつい反応してしまう場面では、獠の(ここで反応してしまってはいけない、鎮まれ!)という心の声が、鈴木の演技から伝わってきた。
 

冴羽獠の二面性の魅力が炸裂(さくれつ)!コスプレショーのシーンにときめく

 このように、時代を現代に変更したことにともない、さまざまな価値観、特に女性の描き方や、獠の女性に対するスタンスがきちんとアップデートされている。基本的に、そのキャラクターが望まない露出や性的搾取はない。警視庁の刑事・野上冴子のピンヒールやジュエリーも、本人が好きでそれを選んでいるというキャラクターになっている。
 
原作やアニメの獠は初対面の女性依頼人にいきなりボディータッチをしていたが、実写版の獠は女性にいくら鼻の下を伸ばしたとしても、フィジカルな接触をすることはない。一度だけある人物に触れて香が注意をするが、触れた理由がのちにきちんと回収される。
 
並外れた身体能力と戦闘力を持つ最強のスイーパーでありながら、美女の前ではデレデレする三枚目になってしまう、二面性が魅力の冴羽獠。この二面性が凝縮された最高の瞬間がある。
 
くるみが出演するコスプレショーの会場で、馬の頭部の人形(?)を股間につけてカウボーイハットをかぶった獠が、カメラ小僧と敵対する組織からくるみをアクロバティックな動きで守り切る。そして顔を上げた獠が、「ひひーん」というせりふを決め顔&イケボで放つ。我が人生で、まさか馬の鳴きまねにときめく日が来るとは……!
 
くるみを狙う人物との戦いをひとまず終えて、天涯孤独の獠と香がバディとなり、香が100トンハンマー(このアイテムがここにある理由付けも抜かりなし!)を振り回して獠を追い回す。このコミカルでハッピーな場面で終わってももちろん美しいが、アニメのエンディング曲「Get Wild」をTM NETWORKが新たにレコーディングした「Get Wild Continual」が流れるとシリーズ化への期待が高まる。なぜなら「Continual」の意味は「継続的」ですから。
 
「シティーハンター」はNetflixで4月25日(木)から独占配信

ライター
ひとしねま

須永貴子

すなが・たかこ ライター。映画やドラマ、TVバラエティーをメインの領域に、インタビューや作品レビューを執筆。仕事以外で好きなものは、食、酒、旅、犬。

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