「京城クリーチャー」より ©2023 NETFLIX, Inc.

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2024.1.11

「梨泰院クラス」から約4年、パク・ソジュン他豪華キャスト出演のドラマ「京城クリーチャー」:オンラインの森

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、村山章、大野友嘉子、梅山富美子の4人です。

梅山富美子

梅山富美子

日本でも大ヒットしたドラマ「梨泰院クラス」のパク・ソジュンが、約4年ぶりにドラマ主演を務めた「京城クリーチャー」(全10話)がNetflixで配信されている。「わかっていても」のハン・ソヒと共演していることでも話題の本作だ(以下、本編の内容に触れています)。
 

1945年の戦時中が舞台、実業家と母を捜す女性が出会う

 本作の舞台は1945年。オープニングから日本軍が人体実験を行った731部隊を想起させるシーンからスタート。全軍撤退の指示により人体実験の跡を消そうとする日本軍が、積み上げた死体を焼却し、無抵抗な人々を殺すなか、怪しい実験が植民地時代の京城(キョンソン)に移ることが示唆される。
 
この恐ろしい実験の影響で、京城で質屋を営む実業家のチャン・テサン(パク・ソジュン)、10年前に失踪した母親を捜索するユン・チェオク(ハン・ソヒ)の人生が交差していくという物語が展開する。
 
京城一の情報通であるテサンは、警務官の石川に、行方不明になった愛人・明子を捜すようにと命令され、拒否すれば店や所有物をすべて奪うと脅されて仕方なく彼女を捜し始める。一方のチェオクは、テサンから母親の情報を得ようとするもうまくいかず。最悪な出会いを果たしたテサンとチェオクは、時に反発し合い、時に協力し合いながらお互いの捜し人の捜索を続け、地下で謎の実験が行われている甕城(おうじょう)病院にたどり着き驚愕(きょうがく)の事実を知る。
 
パク・ソジュン演じるテサンは、一代で富を築き、混乱の世もどこ吹く風で社交の場で女性をとりこに。第1話では、仕立ての良いスーツを着たテサンの華やかなたたずまいが眼福。また、石川に脅されても、表向きはひょうひょうとしているが、どんなことがあっても生き延びることへの並々ならぬ思いと、チェオクのことになるとこれまでの余裕が全くなくなるというギャップも魅力だろう。
 
一方、チェオク役のハン・ソヒは、「マイネーム:偽りと復讐」でもアクションに挑戦していたが、本作でも本格的なアクションを披露。男性陣との体格差をものともせず、むしろその差を生かした動きは精度が増し、目にも留まらぬ速さの銃やナイフさばきもお見事。
 

実力派の俳優陣の演技は素晴らしい。今回の謎や疑問はシーズン2に持ち越しへ

 本作には、ウィ・ハジュン(「イカゲーム」)、チョ・ハンチョル(「ヴィンチェンツォ」)、キム・ヘスク(「マイ・デーモン」)、パク・ジファン(「私たちのブルース」)といった実力派たちが出演。目を背けたくなるような拷問などのシーンもあり、俳優陣の体を張った演技は目を見張るものがある。しかし、彼らの演技に比例せず、おのおのの物語の説明が足りずぶつ切り感あるストーリーは粗が目立ち、俳優陣の演技のすごさだけが目立つ場面が多々あった。
 
さらに、タイトルにもある〝クリーチャー〟の物語の焦点がややぼやけ気味。恐ろしくも悲しいクリーチャーだったが、加藤中佐(チェ・ヨンジュン)の思わせぶりな言動から中盤から後半にかけてクリーチャーがもっとド派手に暴れ回り、強烈な展開を迎えるのだと思った視聴者も多いだろう。また、前田(クローディア・キム)の過去、幸本(ウ・ジヒョン)の存在意義など、物足りなさは否めない。
 
そして、普段から日本語を使う人だけが感じる最大の違和感は、日本語のセリフだろう。韓国の俳優が日本人を演じているのだが、普段映画やテレビで聞くような標準語とは時々異なり、聞きなじみがないアクセントのため何者なのかがわかりづらいことも。いくつかのセリフは機械的な翻訳っぽさも感じた。
 
これは日本語のセリフや俳優陣の努力を否定するわけではない。ただ、人によっては物語への没入感を阻むこともあるということ。そのため、少しでも現実に引き戻されてしまうようなことがあるなら、日本語吹き替え版で見た方が良いだろう。ただ、セリフ自体は日本語と朝鮮語がかなり入り交じる作品のため、物語の見方は少しばかり変わるかもしれない。
 
ちなみに、石川の妻・前田役で妖しい魅力を放ったクローディア・キム(韓国での活動時はキム・スヒョンまたはスヒョン表記)は、「ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生」でナギニ役を務めたことでも知られる(本作では、石川と前田は夫婦だが別姓の設定となっている)。
 
本作は、12月22日にパート1(第1〜7話)、1月5日にパート2(第8話〜10話)が配信されたが、10話のラストは続編を匂わせるような終わり方だった。やはり、このままでは終われないだろう。シーズン2が24年の内に配信されることが先日発表された。すでに撮影を終えているのか映像やスチールカットも一部公開され、舞台は現代に移るようだ。
 
映像作品は、ストーリーのつながりや時系列が完璧である必要はない。これは重箱の隅をつつくような行為だと重々承知している。それでも、シーズン1は物語の伏線がわかりやすく、逆に伏線を張っただけで回収されないことが引っかかり続け、最後まで若干疑問を持たせてしまうような構成だった。シーズン2では、しっかりと残された謎を回収して、もし日本人のキャラクターが登場するのならば日本語の違和感を払拭(ふっしょく)してもらいたい。
 
「京城クリーチャー」はNetflixで配信中。

ライター
梅山富美子

梅山富美子

うめやま・ふみこ ライター。1992年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映像制作会社(プロダクション・マネージャー)を経験。映画情報サイト「シネマトゥデイ」元編集部。映画、海外ドラマ、洋楽(特に80年代)をこよなく愛し、韓ドラは2020年以降どハマり。