ひとしねま

2022.5.13

チャートの裏側:無限の宇宙に果てなき夢

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

米国のマーベルコミックを原案とするマーベル映画は、「スパイダーマン」と「アベンジャーズ」の両シリーズが、興行のピークを作ってきた。新型コロナウイルスまん延以前の話だ。以後では、マーベル映画はこれまで6本。最大ヒットは、やはり「スパイダーマン」だった。

そのマーベル映画の新作が、「ドクター・ストレンジ」の2作目だ。1作目の興行収入は約19億円だが、主人公はその後、同種の他作品によく登場するようになった。ストレンジの知名度は上がり、それを受けて新作公開となった。最終20億円超が狙える。健闘の部類に入る。

舞台はマルチバースという宇宙のパラレル的な多空間である。主人公たちは、その中をかいくぐり敵と戦う。本作の肝は話の展開とマルチバースの設定だ。話的には、マーベル映画の真骨頂たる他作品とのつながりがある。マルチバース的な空間性も作品間の関連性をもつ。

このような形は固定ファンしかわからないと言われがちだが、そうではないと思う。なぜ20億円という数字が狙えるのか。そこには、映画への今日的な関心の示し方が見てとれる。マーベル映画は、まさに宇宙的な無限の広がりを志向する強固な映画群体ではないのか。多くの人は、そこに果てしない夢を見ようとしているのかもしれない。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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