毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2021.4.15
チャートの裏側:脇役に光を当てた〝祭り〟
バイプレーヤーという言葉は、今では広く浸透している。脇役のことだが、それを題名にし、意味を一層身近にしたのが深夜ドラマ「バイプレイヤーズ」だったと思う。6人の俳優中心に、虚実入り交じった彼らの個性、演技合戦に魅力があった。その映画版が公開された。
「バイプレイヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~」だが、チャート内に入らなかった。理由はいろいろあるが、ここでは映画版の意義を考える。背景には、往年の名脇役にスポットが当たる局面が近年増えてきたことがある。東京都内の名画座で特集がよく組まれる。
以前では考えられなかったことだ。これは時代の変化と関係している。映画の歴史を彩った主演スターへの評価がほぼ定まり、主演スターを支えた個性的な脇役に目が注がれるようになった。映画は時代によって、さまざまに見方が変わる。今は脇役に光が当たり始めている。
今回のドラマから映画版の製作は、そのような傾向を抜きには考えられない。加えて、ドラマメンバーの一人だった亡き大杉漣さんへの温かなまなざしが、映画版に強くある。大杉さんへのリスペクトそのものが、脇役、主役を超えた俳優への賛歌になっている。本作は俳優たちの祭りだ。作品論、興行展開を超えた意義が大きいと思う。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)