綾瀬市名物とんすきメンチ

綾瀬市名物とんすきメンチ

2023.3.25

「祖父と一緒に仕事をしたかった」一見普通のお弁当にかくされたストーリー

3度の飯より映画が好きという人も、飯がうまければさらに映画が好きになる。 撮影現場、スクリーンの中、映画館のコンフェクショナリーなどなど、映画と食のベストマリッジを追求したコラムです。

宮脇祐介

宮脇祐介

「お客様、地域、社員・パート、そして祖父母への感謝を忘れずに仕事をする」と言う神奈川県綾瀬市の(株)協和専務取締役・黒川利幸さん。日ごろは調理助手、弁当受け付け・配達・管理、経理と八面六臂(ろっぴ)の活躍をする黒川さんはボランティアであやせプロモーションクラブの活動もおこなっている。ロケ飯も発注受けから配達までワンストップで行っている。一見、普通のお弁当に見えるが、その一食一食に込められたストーリーを語ってもらった。

 

お米の良しあしが分かる人が最も多い

「お弁当は栄養バランスはもちろん季節感や地元のものを取り入れるようにしています」。ロケ飯には綾瀬市の郷土料理豚のすき焼きと豚汁の中間のようなとんすきを具にしたとんすきメンチを入れるようにしている。具は豚肉のいろいろな部位、ネギ、しらたき、ゴボウなどが食感よくゴロゴロと入っている。普通のコロッケと思って食べた人を驚かせ、喜ばせる。また、今日のおかず、鳥のネギ味噌(みそ)焼きは一手間かけた一品。

ロケ弁のおかずは「入れて欲しくない物をお聞きする」。「魚で言えばサバやサケが多いので、それ以外のサワラやホッケなどが好まれる」そうだ。
そして何よりもこだわっているのがお米だそうだ。山形県のはえぬきを使用。「同業他社の2ランクアップくらいのものを使っている」と言う。「お米の良しあしが分かる人が最も多いので、他の店との違いが出せる」とも。しかし、価格が安いものも高いものもご飯の量は同じ。「確かに、ギリギリでやっていますね」

 取材した時間は14時前から1時間半ほど。すでに弁当作りや配達が終わった後。社員、パート総出で調理室の掃除をずっとずっとやっていた。掃除の行き届いた「調理棟も事務所も創業者の祖父が建てたもの」だと言う。外観の印象と中の清潔さのギャップが好ましい。防腐剤・保存料も使わないお弁当を作るので気をつけているのがよく分かる。
 

戦地では草やカエルまで食べてきた

「祖父母には感謝以外にない」。家族の事情で幼い時から2人に育ててもらったそうだ。
祖父の孝さんは頑固で、負けず嫌い。大正15年生まれの戦争体験者。黒川さんの食べ物の好き嫌いを見て「戦地では草やカエルまで食べてきた。こんなに食べ物があって腹いっぱい食べられるのに好き嫌いをするなら食べなくていい」と強く叱られたと言う。祖母は口うるさくしつけに厳しかった。孝さんは黒川さんが19の時に亡くなる。彼の勧めで経理の専門学校に通っていた頃だったそうだ。卒業後は電線工事や運転手をしていたが、家業を継いで事業を拡大していた叔父の現社長・矢口貢さんから声をかけられ協和に入る。今は「祖父と一緒に仕事をしたかった」思いが強いそうだ。
 

地域の人に誠意を持って

経営周りを社長の矢口さんが、現場と広報・地域貢献を黒川さんが担っている。普段は幼稚園児や企業、市役所などにお弁当を卸したり、食堂を運営したりしている。「お世話になっている地域の人に誠意を持って接していきたい」
そういえば、おじい様と仕事をしていたら今はどう言われると思います?と聞くのを忘れたなあと帰りのバスの中で思ったが、それは次回また会った時の楽しみにとっておこうと思うような親しみの持てる方でした。
 

☑人気ロケ飯

とんすきメンチ

大久保商店を中心に開発された綾瀬市のB級グルメ。豚のすき焼き風の具がごろごろと入っている。特にゴボウの食感に新鮮さを感じる。綾瀬市商工会では「あやせとんすきメンチ取扱認定書」を発行。あやせベースサイドフェスティバルではキッチンカーでの販売が名物になっていた。今年はその風景も復活するとよいなあ。

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ライター
宮脇祐介

宮脇祐介

みやわき・ゆうすけ 福岡県出身、ひとシネマ総合プロデューサー。映画「手紙」「毎日かあさん」(実写/アニメ)「横道世之介」など毎日新聞連載作品を映像化。「日本沈没」「チア★ダン」「関ケ原」「糸」「ラーゲリより愛を込めて」など多くの映画製作委員会に参加。朗読劇「島守の塔」企画・演出。追悼特別展「高倉健」を企画・運営し全国10カ所で巡回。趣味は東京にある福岡のお店を食べ歩くこと。

カメラマン
宮脇祐介

宮脇祐介

みやわき・ゆうすけ 福岡県出身、ひとシネマ総合プロデューサー。映画「手紙」「毎日かあさん」(実写/アニメ)「横道世之介」など毎日新聞連載作品を映像化。「日本沈没」「チア★ダン」「関ケ原」「糸」など多くの映画製作委員会に参加。朗読劇「島守の塔」企画・演出。追悼特別展「高倉健」を企画・運営し全国10カ所で巡回。趣味は東京にある福岡のお店を食べ歩くこと。