「四畳半タイムマシンブルース」Ⓒ2022森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会

「四畳半タイムマシンブルース」Ⓒ2022森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会

2022.9.27

無駄な過去など何もない「四畳半タイムマシンブルース」:英月の極楽シネマ

「仏教の次に映画が大好き」という、京都・大行寺(だいぎょうじ)住職の英月(えいげつ)さんが、僧侶の視点から新作映画を紹介。悩みを抱えた人間たちへの、お釈迦(しゃか)様のメッセージを読み解きます。

英月

英月

誰もが一度は思う「あの時、ああすればよかった」。もし、それがかなったらどうしますか? この映画は、過去に戻ってやり直すことができるという選択が与えられた人たちの物語です。映画開始と同時に、畳み掛けるように始まるナレーション。独特な言い回しをゆっくり咀嚼(そしゃく)する間もなく会話を追いかけていくと、すでに唯一無二の世界観にどっぷりとはまっています。

物語の舞台は、京都にある今にも壊れそうな木造2階建てのおんぼろアパート。トイレは共同、クーラーがあるのは1部屋のみ。幸運にもその部屋に住むことができた大学3回生の「私」(声・浅沼晋太郎)ですが、引っ越し後わずか数日でクーラーのリモコンを水没させてしまいます。灼熱(しゃくねつ)の8月に耐えかねた「私」と仲間たちは、たまたま見つけたタイムマシンに乗って、水没前のリモコンを取ってくることを思いつきます。

「せっかくのチャンスをリモコンのために使うなんてもったいない!」と思いますが、そもそも私たちにはタイムマシンも、過去に戻る選択もありません。当然のことながら過去を変えることはできませんが、過去の意味が変わってくることはあります。

仏教の阿弥陀(あみだ)仏の「阿弥陀」には、「無量寿(むりょうじゅ)」、つまり「量ることのできないいのち」の意味があります。いのちは比べる必要がないという事実に立った時、振り返った過去はきっと違います。かつて35回以上のお見合いに疲れて米国に家出をした経験のある私にとって、そうした過去のつらかった出来事は変えられませんが、その過去のおかげで今がある。無駄なことなど何もないのですね。9月30日公開。

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ライター
英月

英月

えいげつ 1971年、京都市下京区の真宗佛光寺派・大行寺に生まれる。29歳で単身渡米し、ラジオパーソナリティーなどとして活動する一方、僧侶として現地で「写経の会」を開く。寺を継ぐはずだった弟が家出をしたため2010年に帰国、15年に大行寺住職に就任。著書に「二河白道ものがたり いのちに目覚める」ほか。インスタグラムツイッターでも発信中。Radio極楽シネマも、好評配信中。

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