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2022.12.02
【映画祭】審査員やってみた! 48時間で映画作り「FUKUOKA 48 Hour Film Project」
「FUKUOKA 48 Hour Film Project」。これは過酷な映画祭である――。
締め切りの49時間前に始まるオリエンテーション。そこでくじ引きして、撮影する映画のジャンルが決まる。コメディー、ホラー、ドラマ、SF、タイムトラベル……。
さらに各チーム共通のお題が発表される。登場人物の職業、小道具、セリフ。ちなみに今年は声優、領収書、「口は災いの元よ!」。これをストーリーの中に組み込むのだ。
事前に用意できるのはスタッフとキャスト、ロケーションだけ。
オリエンテーションが終わると48時間後の締め切りに向け脚本を作り、撮影して、編集して、音を入れて、完パケで納品する。
カンヌ目指してクランクイン! 今年も〝短く〟険しい道のり
縁あって、昨年からこの映画祭の審査員に加わっている。
九州の中でも独自のドラマ、番組、CMが盛んに制作されている福岡。最近では「ザ・ファブル」シリーズの監督江口カンや、現在公開中「夜を越える旅」の萱野孝幸監督などを輩出している。
そんなプロフェッショナルから学生、親子など、今年は14組が挑戦した。そのうち11組が時間内に納品、3組は残念ながら棄権もしくは間に合わせることができなかった。
何だかそれ自体がドラマになりそうだが、参加するチームは気が気ではなかっただろう。
そんな渾身(こんしん)の一作一作を見て順位を付ける。
そして、彼らの目標はカンヌ国際映画祭。
福岡の他、東京や大阪、そして世界中の代表は一旦ハリウッドにて2023年3月に行われる約120都市のグランプリが集まる「Filmapalooza」という「48 Hour Film Project」のフィナーレを飾る世界大会に出場。
その中から約10作品が、カンヌ国際映画祭で上映されるのである。
22年の審査員は3人。
地元福岡で映像の仕事をする傍ら、多くの短編映画を製作する高村剛志さん。自らの作品「そんな愛のはなし」で、この映画祭のカンヌ出場を果たした経験を持つ。
そして、30回の長きにわたって行われたアジアフォーカス・福岡国際映画祭のアーカイブを使って、昨年より「Asian Film Joint」を開催している三好剛平さん。彼は多くのアジアの映画アーカイブを見続け、上映をしている。
そして、僕。
僕の寸評:上位3作品、カンヌへの切符をつかんだのは!?
福岡をよく知る2人と昨年を知る僕の意見は時に交わり、時に平行線をたどった。
カンヌを目指す作品賞に最後に残ったのが我利我利プロ「時をスベる男」、9029works「それでもわたしは」、そしてODA&Fz「気まぐれのドッペルゲンガー」だった。
プレミアム上映会にて観客賞を取った「時をスベる男」は、コメディーという難しいお題を見事に仕上げていた。
ウェルメードとは、この作品のためにある言葉ではないか。
話のすじといい、キャスティングといい1歩も2歩もリードしていた。
▲【予告篇】我利我利プロ「時をスベる男」【2022 FUKUOKA 48hfp】
「それでもわたしは」は、役者から舞台、小道具に至るまで映像への目配りがとてもよく行き届いている印象だった。
▲【予告編】9029works 「それでもわたしは」【48hfp FUKUOKA 2022】
一方の「気まぐれのドッペルゲンガー」は僕にはそんなに響かなかった。
メモを振り返って見ると4位の位置にいた。
主演の女優が印象に残るのと、設定がコロナ禍の今とシンクロしているなあと思うことくらいだった。
▲48 Hour Film Project2022「気まぐれのドッペルゲンガー」予告
しかし、審査結果は「気まぐれのドッペルゲンガー」が1位でカンヌ挑戦のチケットを手に入れた。
同作品の時代性とスクリーンから伝わる言葉を超えた説得力が、大逆転の結果をもたらしたのだ。
小田憲和監督が授賞式の時に「これではカンヌに行けないと、一度できた脚本を捨てて再度書き直した」旨を話していた。
もしかしたら、その思い切りの勝負が1位を引き寄せたのではないかと思った。
48時間の間、試行錯誤をし、本を作り、撮影して作品に完パケる。
来年もぜひそんな挑戦の結果を見てみたいと思わせる映画祭なのでした。
追伸:頑張れ、ODA&Fz「気まぐれのドッペルゲンガー」。世界での健闘をお祈りしています。福岡から世界をつかめ!