チャートの裏側

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2022.1.13

チャートの裏側:革命的傑作「忘却」とは

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

「スパイダーマンノー・ウェイ・ホーム」は、まぎれもない傑作である。スパイダーマンの正体が世間に知れたことを発端に、驚くべき話が展開される。詳細は書けない。書いてはいけない。ネタバレが過度に忌避される時代だが、本作はそのレベルをはるかに超えている。

一つだけ、ほのめかしておく。忘却、つまり「忘れる」ということが、作品の基底部にある点だ。それは、人の存在、死に深くかかわる。人の生きた証しなども含めた全存在の「無」にも行き着く。忘却は悲しいが、運命でもある。それが、映画ならではのマジックで反転する。

その視点が、ハリウッドが送り出すエンタメ大作のヒーロー論につながっている。ここが、本作の奇跡的に素晴らしいところだ。涙があふれ出てくる。ひたすら、打ちのめされる。ヒーローへの愛、映画への愛に満ちているからだ。とてつもない映画が出現したものである。

公開4日間で、興行収入が17億円に迫るロケットスタートになった。一昨年のコロナ禍以降に公開された邦画、洋画の実写作品としては最高の成績だ。年末から公開された米国をはじめ、世界中で大ヒットとなっている。日本のある興行関係者は、本作を「革命的な映画」と呼んだという。この認識が、国境を超えているのだと思う。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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