ダ・ヴィンチは誰に微笑む  (c)2021 Zadig Productions (c) Zadig Productions - FTV

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2021.12.02

ダ・ヴィンチは誰に微笑む

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

2017年、米ニューヨークのクリスティーズで1枚の絵画が美術史上最高額の4億5000万㌦で落札された。その絵画とは、レオナルド・ダ・ヴィンチ最後の作品とされるキリストの肖像画「サルバトール・ムンディ」。長年行方不明になっていたこの絵画をめぐる真贋(しんがん)論争や、アート界の奇妙なからくりを描くドキュメンタリーだ。

事の始まりは05年、ある画商が小さな競売会社のカタログに載った絵画を1175㌦で落札したこと。やがて英ナショナル・ギャラリーのダ・ヴィンチ展に〝真作〟として出品されたその絵は、ロシアの大富豪に1億㌦超で売却される。キュレーター、研究者、ジャーナリストらが独自の意見を披露し、美術界の裏で暗躍する敏腕ブローカーも登場。アートの値打ちにまつわる常識外れの事実が、ミステリー映画のように描かれる一方、最後まで解かれない大いなる謎も。アントワーヌ・ヴィトキーヌ監督の取材力と構成も見事。1時間40分。東京・TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマほか。(諭)

ここに注目

アートを真贋や価値ではなくビジネスの視点で見ると、浮かび上がるのはかくも俗っぽく滑稽(こっけい)な人間の姿! 美術に関わるさまざまな職種の人たちの役割や意見に触れられる面白さもある。謎は残るが、美術界は国家レベルのたくらみが存在する世界であるとよく理解できた。(細)

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