「きっと地上には満天の星」© 2020 Topside Productions, LLC.All Rights Reserved.

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2022.8.05

特選掘り出し!:「きっと地上には満天の星」 温かな安住の地どこに

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

ニューヨークの地下空間に広がる、さまざまな問題を抱えた人たちが生活するコミュニティー。ニッキーと5歳の娘のリトルは、ここで暮らしている。ある日、不法滞在者を排除しようと市の職員がやって来たため、母娘は地上へ逃げることを決意する。

この映画は、監督が非営利団体で子守として働いた経験や、ノンフィクション「モグラびと ニューヨーク地下生活者たち」を読んだことから生まれた作品だという。リトルの目の高さで見る地下空間は、住人たちが手を差し伸べあい、地上にはない温かさがある場所として描かれる。地上には危険が潜み、カメラは終盤に向かうにつれて追い詰められる母娘を、スリリングに切り取っていく。

格差が広がる世界で、人間にとって安住の地はどこなのか。愛ゆえの胸が張り裂けそうな決断を見届ける頃、母娘の幸せな未来を願わずにはいられなくなる。詩情豊かなセリフを織り込みながら、臨場感あふれる映像で問いを投げかけた監督は、ドラマシリーズ「モダン・ラブ」の1編を手がけたセリーヌ・ヘルド&ローガン・ジョージ。セリーヌ自身がニッキーを演じた。1時間30分。東京・ヒューマントラストシネマ渋谷、大阪・シネ・リーブル梅田ほか。(細)