毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2023.3.24
「ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー」
ちさと(高石あかり)とまひろ(伊澤彩織)の殺し屋2人組は、ジムの会費滞納や車の教習代などでお金に困窮。殺し屋協会アルバイトのゆうり(丞威)とまこと(濱田龍臣)の兄弟は「ちさととまひろのポストを奪えば正規のクルーに昇格」といううわさを聞き、2人に狙いを定める。
殺しの腕はいいが、暮らしがうまくいかない女性2人のコミカルなやりとりと切れのいいアクションが満載。バイトや定食屋、告るなど、仕事の中身を除けば普通の若者の会話や体験をちりばめて、その不器用さに愛着を感じさせる作りだ。生活感や金銭感覚とのギャップが笑いを生み、憎めないキャラクターとさっそうとした動きのアンバランスが癖になる。銃を撃ちまくるだけでなく、一時代前のアメリカ映画では定番の、素手での格闘というクライマックスも作品全体の緩さを受け継いだよう。2人に挑む兄弟も含め、動機や背景に踏み込まず、高いテンションのままで駆け抜ける101分である。阪元裕吾監督。東京・新宿ピカデリー、大阪・なんばパークスシネマほか。(鈴)
異論あり
アクションのアイデアやキレは見応え十分。しかしそれ以外は……。物語の主軸は凄惨(せいさん)な殺し合い。背景説明のない容赦ない暴力と、主役2人の間の抜けた生活ぶりなど笑いを狙って仕込んだ小ネタが、白々しく乖離(かいり)して見える。などと難癖を付けること自体が的外れかも。(勝)