「チャートの裏側」映画評論家の大高宏雄さんが、興行ランキングの背景を分析します

「チャートの裏側」映画評論家の大高宏雄さんが、興行ランキングの背景を分析します

2021.3.11

チャートの裏側:圧巻の出来、厳しい結果

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

映画を見終わったあと、こう思った。もし完全な劇場体制で上映されていたら、興行収入は優に20億円は超えたのではないかと。ディズニー作品「ラーヤと龍の王国」のことだ。同社は、本作で初めて劇場公開と配信を同時に行った。映画館は非上映、上映で対応が分かれた。

非上映館は、配信との同時展開に難色を示したとの推測が立つ。今後、同じことが行われることへの警戒感もあったろう。上映館は同時配信であっても、ディズニー作品のブランド性を考慮したと見られる。何と言っても、同社作品は信用度があり、ある程度の集客が期待できる。

だが、結果は厳しかった。20億円どころか、10億円、いや7億円を超えるかどうか。配信で見る人も多いことだろう。大都市圏の中枢的なシネコンの上映が少ないのだから、配信の影響以前に見る機会も大きく失われている。同時展開の難しさと限定的な上映館が重なった。

作品は、見事な出来栄えだった。守り神でもある龍の再生のもと、ラーヤを中心とした勢力が、国の分断化を阻止しようとする。その際のキーワードが、裏切りの先にある、人を信じることの大切さだ。このテーマは、今の時代にこそ突き刺さる。卓越したビジュアルは圧巻である。とにかく、映画館でもっと見られるすべはないか。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)