毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2023.2.17
特選掘り出し!「BLUE GIANT」 圧巻の演奏と臨場感
ジャズに魅了され、サックスを始めた仙台の男子高校生、大(声・山田裕貴)が卒業とともに上京し、同世代の2人とトリオを結成する。3人は10代で国内最高のジャズクラブのステージに立つという夢に向かって疾走する。2013年に石塚真一が青年漫画誌「ビッグコミック」で連載を開始、シリーズ累計920万部超という人気漫画の映画化だ。
監督は「劇場版『名探偵コナン ゼロの執行人』」の立川譲、脚本は漫画原作者のNUMBER 8。とにかく、物語の4分の1を占める演奏シーンが圧巻だ。楽器や客の動きなどは現実の演奏風景を参考に作画され、ピアノは上原ひろみ、ドラムは石若駿、大が吹くサックスはオーディションで選ばれた馬場智章というトップミュージシャンが担った。トリオの演奏レベルが急成長していく過程が、画(え)だけでなく、リアルな音で見事に表現されている。
ジャズをテーマにした映画は数あれど、青い炎のように熱い音でスクリーンを埋め尽くすには、実写よりもアニメがふさわしかったか。映画館で見れば、ライブハウスの一聴衆となっている感覚になるはずだ。2時間。東京・TOHOシネマズ日比谷、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(坂)