約束の宇宙  ⒸCarole BETHUEL ⒸDHARAMSALA & DARIUS FILMS

約束の宇宙 ⒸCarole BETHUEL ⒸDHARAMSALA & DARIUS FILMS

2021.4.22

約束の宇宙

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。


著作権
シングルマザーのフランス人宇宙飛行士サラ(エヴァ・グリーン)が、火星探査ミッション〝プロキシマ〟のクルーに選ばれた。しかし7歳の娘ステラ(ゼリー・ブーラン・レメル)と離ればなれになったサラは、ロシアでの訓練中に不安を募らせていく。

宇宙開発を題材にしているが、壮大なSFではない。宇宙飛行士としても母親としても重い責任を背負った主人公の葛藤を通して、仕事と育児の両立、夢を追うことの代償といったテーマを描く普遍的なドラマである。NASAならぬ欧州宇宙機関の協力のもと、実際の訓練施設や発射基地で撮影を実施。リアリズムを基調として、飛行士たちの過酷なトレーニング風景をカメラに収めた映像世界には、母娘それぞれの感情が揺らめく詩的な瞬間も刻み込まれている。英雄的に描かれがちな宇宙飛行士を生身の人間として体現したグリーンと、感受性豊かな子役の演技も秀逸。アリス・ウィンクール監督。1時間47分。東京・TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマほかで公開中。(諭)

ここに注目

ケルン、モスクワ、カザフスタンにある実際の訓練施設や宇宙基地を使った撮影はリアル感が満載でドキュメンタリー映画のよう。過酷なトレーニング、宇宙飛行士の会話からも、男性主導の社会で、女性、しかも母親が宇宙飛行士となる過程とその困難さが浮かび上がる。(鈴)