「情熱の砂を踏む女」 (著・下村敦史) 徳間書店 四六判 定価1,870円

「情熱の砂を踏む女」 (著・下村敦史) 徳間書店 四六判 定価1,870円

2022.5.11

「ド迫力の闘牛シーン」+「極上の人間ドラマ」+「予想外のミステリー」 下村敦史の闘牛ドラマミステリー「情熱の砂を踏む女」

出版社が映画化したい!と妄想している原作本を担当者が紹介。近い将来、この作品が映画化されるかも。
皆様ぜひとも映画好きの先買い読書をお楽しみください。

ひとしねま

鶴田大悟

闘牛ドラマミステリー

南欧での一大ロケを決行。
そんな超大作映画がかつてあったのをご存じでしょうか。
1960年に公開された、舛田利雄監督作品「闘牛に賭ける男」です。
主演は石原裕次郎さんと、北原三枝さん。2人の結婚により、これが最後の共演映画となったことも話題になったそうです。
 

ひたむきに夢を追いかける彼女の姿

今の時代、予算的にこのような大作は難しいのかもしれません。
しかし! 
「ドライブ・マイ・カー」の大成功に続けとばかりに、世界に打って出る作品を生み出そうと大志を抱いている映画関係者もいらっしゃるに違いありません。
そんな熱い方にぜひお勧めしたいのが、ミステリー小説の俊英、下村敦史さんが放つ闘牛ドラマミステリー「情熱の砂を踏む女」です。
 
舞台はスペイン。大技に挑んだ末に、闘牛士の兄は非業の死を遂げてしまった。弔うためにスペインへと渡った妹は、自身も闘牛の世界に魅せられて闘牛士を目指します。
しかし、閉鎖的な男性社会である闘牛界で女性、それも日本人が闘牛士を目指すのは並大抵のことではありませんでした。度重なる嫌がらせと闘牛士としての「心」を持つ難しさに、折れそうになりながらも、ひたむきに夢を追いかける彼女の姿を見て、徐々に味方も現れます。そんな中、兄の死に不審な点が浮かび、物語は思わぬ展開を見せ――。
 

一粒で三度美味(おい)しい

牛の息遣い、闘牛士の心音、舞う砂煙、ほとばしる血潮。
切れ味鋭い筆致で描かれる闘牛シーンは迫力満点で、これ以上ないくらい映像的です。
しかし、本作の真の魅力は人間ドラマにあります。凛々(りり)しく人生を謳歌(おうか)しようという女性の情熱、それぞれの登場人物たちの成長譚(たん)、複雑に入り組んだ人間模様が織りなす予想外の展開は、読む者を最後まで飽きさせません。
「ド迫力の闘牛シーン」+「極上の人間ドラマ」+「予想外のミステリー」を備えた、一粒で三度美味(おい)しい映画になることをお約束します!
 
本作は、下村さんがデビュー前から15年の歳月をかけて紡いだ渾身(こんしん)の一作。
価値観の変容を受けてその都度アップデートし、大切に育ててきた情熱の賜物(たまもの)です。
そんな下村さんの熱い思いに共鳴してくださる方、世界に打って出る映画を作りたい方。
ぜひぜひ、本書にご注目ください!

ライター
ひとしねま

鶴田大悟

つるた・だいご
海外ガイドブックの編集を経て、株式会社徳間書店に入社。文芸編集部配属。