犬部! (C)2021『犬部!』製作委員会

犬部! (C)2021『犬部!』製作委員会

2021.7.15

犬部!

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

獣医学部の学生、颯太(林遣都)は同級生の涼介(中川大志)らと動物保護サークル「犬部」を設立し、目の前の命を救おうと里親募集や譲渡会を行っていた。それから16年、獣医師になった颯太が保護活動中に逮捕される。心配した犬部の仲間が集まる中、動物愛護センターで働く涼介だけが姿を見せなかった。

原案本は片野ゆかのノンフィクション「北里大学獣医学部 犬部!」。殺処分や多頭飼育崩壊といった動物を巡るさまざまな問題が描き出されているが、物語が決して暗くならないのは、颯太の「1匹も殺したくない」という信念や動物への惜しみない愛を表現した林の力量が大きく、犬を見つめる瞳から優しさがあふれ出ている。

作品には多くの動物が登場するが、トレーナーらの指導で、快適に過ごせるよう気を配ったという。動物の命を大切にする社会は、人間も生きやすい世界に違いないと感じさせてくれる爽やかな1本。篠原哲雄監督。1時間54分。22日から東京・TOHOシネマズ日本橋、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(倉)

異論あり

 行き場を失った犬や猫の保護や里親探し、殺処分の問題を子供でも理解できる目線で描いて共感を呼ぶ。可愛さばかりを前面に打ち出す動物映画とは一線を画した。ただ、理想にのめり込む颯太や現実と向き合い葛藤する涼介らの人間ドラマは、表層的で踏み込みがやや足りない。(鈴)

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