毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2021.8.19
チャートの裏側:今後の集客、口コミが鍵
お盆興行が過ぎた。年間を通して屈指の集客力を誇るこの時期だが、昨年同様に今年もそのような華やいだ雰囲気はない。複雑な心持ちで映画館に行った人、控えようと思った人、さまざまであったろう。ワクチン接種が進んだ年配者の集客も、まだまだ芳しくないと聞いた。
この14、15日の土日、興行収入で上位15本の累計が、昨年比102%、おととし比58%(同時期の土日比較)だった。これを見ると、やはり復活からは遠い。東京都内はじめ多くのシネコンが、座席の間隔をあけてチケットを販売している。心理的、物理的に厳しさは続く。
一つ、光明は見えた。興行収入が35億円を超えそうな洋画が登場したことだ。「ワイルド・スピード ジェットブレイク」だ。35億円突破となれば、洋画としては「パラサイト半地下の家族」(2020年1月)以来となる。20年前の1作目は5億円未満。近年は飛躍が続いている。
若い観客が多い。中でもカップルが比較的目立つという。カーアクションが見どころの作品だから、男性が女性を誘うパターンらしい。マーベル作品などのように、中身の推移をある程度知らないと、深く味わえないシリーズものとは違う。頭をまっさらにして気軽に見られる感覚が、若い層をそそるのだろう。今後の鍵は口コミである。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)