2022年もはや7月。上半期の映画界では、新作に加えてコロナ禍で延期されていた作品がようやく公開され、ヒットも続発。映画館のにぎわいも戻ってきた。ひとシネマ執筆陣が5本を選び、上半期を振り返ります。
2022.7.07
他者と出会い新たな視点 「カモン カモン」 須永貴子
① 「カモン カモン」(マイク・ミルズ監督)
② 「コーダ あいのうた」(シアン・ヘダー監督)
③ 「ガンパウダー・ミルクシェイク」(ナボット・パプシャド監督)
④ 「スティルウォーター」(トム・マッカーシー監督)
⑤ 「THE BATMAN ザ・バットマン」(マット・リーブス監督)
見るべきテーマと響く歌
コロナ禍をきっかけに試写室や劇場に行く機会が激減し、モニターで映画を視聴するスタイルが自分のスタンダードになってしまった。そんな中、試写室で鑑賞した「THE BATMAN」の不穏な重低音の特別な余韻が今も体に残る。選外だが「トップガン マーヴェリック」のGを感じる飛行シーンも、劇場で映画を見る醍醐味(だいごみ)を呼び覚ます。
「コーダ あいのうた」 © 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS
「スティルウォーター」と「カモン カモン」は、自分の価値観がほぼ固まっている中年男性が、他者との出会いと交わりにより新たな視点を獲得する様に心を動かされた。トム・マッカーシーはサスペンスフルに、マイク・ミルズは合わせ鏡で自分を見つめるようにと、それぞれの作家性を存分に発揮している。「コーダ あいのうた」は、今の時代に見るべきテーマとエモーショナルな歌唱シーンとを兼ね備えた良作だ。「ガンパウダー・ミルクシェイク」は、何かにねじ伏せられそうになったとき用に、心の薬箱に常備しておきたい1本。