3度の飯より映画が好きという人も、飯がうまければさらに映画が好きになる。 撮影現場、スクリーンの中、映画館のコンフェクショナリーなどなど、映画と食のベストマリッジを追求したコラムです。
2023.4.28
寄居町のエプロンマム、昭和ノスタルジーな一品はボリューミーな量もペロリと完食させる優しい魔法がかかったような味
「手作りで、安くて、おいしい、安心な弁当を作っています」。埼玉県寄居町のエプロンマム代表取締役・村上雅光さんは穏やかに話し出す。開業して54年の2代目。お店のある秩父往還の街道沿いは生糸や米の取引でにぎわっていた秩父と熊谷を結んでいるが今や商店もまばら。昔は四九六斎市が立っていたそうだ。もちろんロケ飯は寄居フィルムコミッションが発足する前から始めている。「予算をもらいお任せで作らせてもらっています。肉、魚など前後のお弁当のメニューを聞いてなるべく違うものを彩りよく作るように心がけています」と気遣いも当然。オススメは全部と言い切る。のり弁当380円からメインの日替わり幕の内弁当500円、一番高いうなぎ弁当も1200円とリーズナブルな値段設定になっている。
寄居町には採石場があり、戦闘・爆破シーンなどヒーロー物が多く撮影されている。あの歴代ヒーローたちのおなかも満たしてきた老舗の味である。
できるだけ地場産のものを選ぶため自ら買い出しに行く。最近の悩みはもっぱら物価の上昇。「いつもだったら7000円くらいかなと思うと1万円は支払うことになった」と顔をしかめる。
元々母親のトシ江さんが始めたスーパーなどで販売する総菜屋を村上さんが継いで現在地に弁当屋として居を構えた。昔はお弁当チェーンのフランチャイズを手広く5店舗経営していたこともあったそうだ。「もちろん冷凍食品などを使うこともあるが、お店の人たちと試食して、吟味して気に入ったものを使う」と話してもくれた。
家族3人、前出のトシ江さんと村上さんの妻泰子さん、あとはパート6人でお店を切り盛りしている。60歳代が主流、70歳以上が2人。そのうちの1人、いまだにすべての味付けは88歳のトシ江さんが譲らないそうだ。「レシピはあるが母と同じものはできない。特に薄味は難しい」と笑いながら話す村上さん。料理は家族の3人が行う。「家族だんらんの場で料理についてけんかになることもある」という。
66歳の村上さんに、幾つまでお店をやりますか?と聞くと。「お客さんがいるなら100歳まで。100まで元気な街づくり運動も町ぐるみで取り組んでいるし、あと34年間楽しくやる」と真面目な顔で話すのだった。
実は村上さんは大のお祭り好き。春祭り、北条氏邦祭り、朝顔まつり、夏祭り、水天宮祭、秋の宗像神社例大祭など寄居町には祭りが多い。そのお祭りでなんらかの世話役を務めている。4月29、30日の寄居駅南口駅前拠点施設「Yotteco(ヨッテコ)」広場「YORIBA(ヨリバ)」オープンにともなうイベントでは、寄居町文化財活用活性化実行委員会会長として、令和の大改修・宗像神社例大祭全山車修復御披露目式を仕切る。「集客と回遊性に祭りが役立っているのは間違いない」と熱弁する。実はのぼせもの(博多弁で祭りに熱中する人のこと)の村上さんなのでした。
☑人気ロケ飯
チキンステーキ弁当
ご飯の上にドンと乗った鳥もも肉がインパクトとボリュームを感じさせる。味付けはやはりトシ江さん。彼女が40年ほど前スーパーで総菜を売っていた頃、クリスマスローストチキンが大人気で、そのタレを使って焼き上げている。昭和ノスタルジーな一品はボリューミーな量もペロリと完食させる優しい魔法がかかったような味でした。