ひとしねま

2022.11.18

チャートの裏側:過去の常識通用せぬ重み

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

新海誠監督の「すずめの戸締まり」が、期待通りの大ヒットである。最初の3日間で、興行収入が18億8000万円。100億円超えは視野に入ったが、その先は現時点ではわからない。内容が、全く一筋縄ではないからだ。口コミの広がり方は、過去作品の常識が通用しないと考える。

あるシネコンの関係者から、こんな話を聞いた。本作公開4日目、上映中の午後5時過ぎに起こった地震の最中のことだ。場内から1人の観客が飛び出し、そのまま帰ってしまったという。長い地震だった。観客の気持ちが痛いほどわかる。地震は、作品の内容と関わる。

「すずめの戸締まり」は、東日本大震災と頻発する地震が、話の大きな部分を占める。スペクタクルシーンなどエンタメ要素は詰まっているが、ズシリと重いテーマが作品を貫く。11年前の記憶がよみがえる人もいるだろう。作品の評価は圧倒的だが、見た人は複雑な思いも抱く。

観客の反応では、特に若い世代の人たちが、作品をとてもセンシティブに捉えているという。感受性豊かな年齢で、大震災に遭った人が多かったからだと思う。一方で、話の主軸たる日本各地をめぐる少女の冒険譚(たん)は、心を強く動かすことだろう。過去作品の口コミの常識が通用しないとは、さまざまな要素が絡み合っているからである。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

すずめの戸締まり

九州の海辺の町に住む17歳の鈴芽(声・原菜乃華)は、災いが噴き出る「扉」にカギをかける〝閉じ師〟の草太(声・松村北斗)と出会い、日本中の廃虚にある扉を閉める旅に出る。

©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

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