「家いっぱいの愛」

「家いっぱいの愛」

2024.9.20

「家族とはどうあるべきか⁉」をじんわり描いた、チェ・ミンホら出演のホームドラマ「家いっぱいの愛」

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梅山富美子

梅山富美子

Netflixで配信中の韓国ドラマ「家いっぱいの愛」(全12話)は、どこか懐かしさがありつつも、現代的な要素も盛り込んだホームドラマだった(以下、一部ネタバレあり)。
 


11年行方知れずだった父が大金持ちとなって母子の前に現れる

大手のスーパーの社員として働くピョン・ミレ(ソン・ナウン)は、母親のクム・エヨン(キム・ジス)、大学生の弟ヒョンジェ(ユンサナ)と〝家族ビラ〟という集合住宅に住む。ある日、火災によって〝家族ビラ〟の大家が亡くなり、そこに11年間行方知れずだったミレの父親ピョン・ムジン(チ・ジニ)が新たな大家として現れることから物語は展開していく。
 
ムジンはかつて詐欺に遭い、全てを失ってエヨンと離婚。それから11年、突然大金持ちとなり家族の前に姿を現すのだった。元夫との再会に戸惑いながらも毅然(きぜん)とした態度を取ろうとするエヨン、母親を苦労させた父親が許せないミレ、父親が大金持ちになったことに喜ぶヒョンジェと反応はさまざま。さらに、タトゥーを入れ、警察に出入りしたりと不審な動きを見せるムジンを、〝家族ビラ〟の住人たちは怪しむ。
 
〝家族〟は、時にぶつかり合い、時に歩み寄り、こじれたり解決したりを繰り返して、新しい関係を築いていく。ムジンとエヨンの復縁ロマンスもあり、気持ちが動いてしまうけれど大人な対応をしようとするエヨンの姿は見ている側が妙に気恥ずかしくなるほどリアル。また、ミレと、スーパーの警備員テピョン(チェ・ミンホ)との恋は、さわやかでまぶしかった。第6話では、そんなロマンスを繰り広げる2組が、とある場所で鉢合わせしてしまう。親子で気まずすぎるシチュエーションは爆笑必至だった。
 

11年ぶり共演チ・ジニとキム・ジス、チェ・ミンホらアイドル出身キャストで物語をつむぐ

渋くチャーミングな一面もあるムジン役がハマっていたムジン役のチ・ジニは、「宮廷女官チャングムの誓い」(2003〜04年)で主人公チャングムの相手役を務めたことで知られる。ちなみに、エヨン役のキム・ジスとは「温かい一言」(13年)で夫婦を演じて以来の共演だった。
 
また、アイドル出身のキャストも。ミレ役のソン・ナウンは、ガールズグループApinkのメンバーとして11年から活動を始め、22年には俳優に専念するという理由で脱退した。好青年なテピョン役のチェ・ミンホは、人気グループSHINeeのメンバー。これまで「花ざかりの君たちへ」「花郎<ファラン>」「ユミの細胞たち」とコンスタントにドラマ出演が続いている。
 
お調子者のヒョンジェを演じたユンサナは、アイドルグループASTROのメンバー。ドラマ「クレイジーラブ」などに出演しており、今年日本で上演されたミュージカル「愛の不時着」では主演のリ・ジョンヒョク役を担った。
 
本作は、突拍子もない展開や登場人物もおらず、ドロドロとした愛憎劇でもないため、刺激を求める人には少し物足りなさがあるかもしれない。けれど、相手を思いやる気持ち、自分を大切にする気持ちに気づかせてくれ、肩の力を抜いてホッと一息つけ、心がじんわりと温まるような物語だった。
 
また、プライベートに突っ込みすぎるご近所さんや上司、親が子離れするタイミング、跡継ぎ問題などあるあるな問題も、個を尊重していこうとする展開や、家族とは〝こうあるべき〟だと決めつけるのではなく、彼らなりの着地点を見つけていこうとするのもよかった。
 
Netflixシリーズ「家いっぱいの愛」は独占配信中

ライター
梅山富美子

梅山富美子

うめやま・ふみこ ライター。1992年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映像制作会社(プロダクション・マネージャー)を経験。映画情報サイト「シネマトゥデイ」元編集部。映画、海外ドラマ、洋楽(特に80年代)をこよなく愛し、韓ドラは2020年以降どハマり。

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