ラスト・ナイト・イン・ソーホー © 2021 FOCUS FEATURES LLC. ALL RIGHTS RESERVED

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2021.12.09

「ラストナイト・イン・ソーホー」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

田舎育ちの少女エロイーズ(トーマシン・マッケンジー)がロンドンの服飾学校に入学。寮生活になじめずアパートに引っ越した彼女は、夢の中で憧れのスウィンギング・ロンドンの1960年代にスリップし、歌手志望のサンディ(アニャ・テイラー・ジョイ)の美しさに魅了される。しかしサンディと超自然的に共鳴したエロイーズは、彼女の悲惨な運命を目撃することに。

「ベイビー・ドライバー」のエドガー・ライト監督の新作。ロンドン・ソーホー地区の二つの時代の風俗を華やかに映像化し、ショービズ界に渦巻く残酷な闇をのぞかせる。ダリオ・アルジェント風の毒々しい色彩や鏡のイメージを織り交ぜ、郷愁と悪夢がせめぎ合う魅惑的な世界観を創出した。ただしホラー、ミステリー、ファンタジー、青春などの多彩な要素を欲張った脚本のせいで中盤以降の展開が迷走し、感情的な訴求力もいまひとつ。さっぱり怖くない幽霊の視覚効果も興ざめ。1時間58分。東京・TOHOシネマズ日本橋、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(諭)

ここに注目

田舎から都会へやってきた女の子の警戒心や何気ない風景が恐ろしくなる感覚が、見事に映像化されている。ダークサイドに引きずりこまれていたのは、あなたではなく私だったかもしれない。そう感じたに違いないヒロインの選択や、時を超えた女性の連帯にも心をつかまれた。(細)