「となりのMr.パーフェクト」より

「となりのMr.パーフェクト」より

2024.10.11

素直になれない幼なじみの恋模様をチョン・ヘインとチョン・ソミン共演で描くラブコメ「となりのMr.パーフェクト」

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、大野友嘉子、梅山富美子の3人に加え、各ジャンルの精鋭たちが不定期で寄稿します。

梅山富美子

梅山富美子

韓国ドラマ「となりのMr.パーフェクト」(全16話)は、「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」のチョン・ヘインと「還魂」のチョン・ソミンが、ラブコメで共演ということでも話題の作品だ。
 


30代半ば、関係が進まない2人の恋

優秀な成績でアメリカに留学して大企業に就職したペ・ソンニュ(チョン・ソミン)と、建築家であるチェ・スンヒョ(チョン・ヘイン)は、母親同士が親友で、お互いの〝黒歴史〟を知る仲。人生をやり直すためソンニュが帰国すると、スンヒョは再び彼女に振り回される日々が始まる。彼女のことを気にかけるうち、封じ込めた若き日の恋心が、彼のなかで再び燃え上がり始める。
 
周囲から見れば順風満帆な人生のソンニュは、仕事を辞め、婚約も破棄。人生のリセットを試みるが、一番理解してもらいたい存在であるはずの家族にも、アメリカで起こったできごとを打ち明けることができない。一方のスンヒョは、幼なじみのソンニュが誰よりも大切だからこそ、恋愛に一歩を踏み出す勇気が持てない。さらには、こじらせて本心とは異なることを口にして、彼女を傷つけてしまうことも。30代半ばに差し掛かり、紆余(うよ)曲折あった2人の恋は、簡単には進まない。
 
幼なじみということで、2人の学生時代を振り返る場面があり、チョン・ヘインとチョン・ソミンは30代半ばながら高校生を演じているのだが、その制服姿に違和感がなくその若々しさに驚かされた。ちなみにスンヒョは高校時代に有望な水泳選手だったため、チョン・ヘインは水着姿で健康な肉体美も披露している。
 
また、ソンニュの親友で救急隊員のチョン・モウム(キム・ジウン)と、近所に引っ越してきた記者カン・ダノ(ユン・ジオン)のサブカップルの恋も胸キュンがいっぱい。これまで恋をしたことがないモウムが、胸のときめきで恋を自覚する様子は初々しく、ダノに気持ちをまっすぐ伝える様子はかっこよく、ダノが心を揺さぶられるのも納得。2人の恋が、家族愛にもつながっていく様子は涙を誘う。
 
ほかにも、スンヒョとソンニュの両親もクセが強く印象的だった。ソンニュの母親で、彼女に厳しすぎるミスク(パク・チヨン)、娘の将来を心配する料理人のグンシク(チョ・ハンチョル)、エリートで言動が鼻につくスンヒョの母親ヘスク(チャン・ヨンナム)、ヘスクとは長年距離を感じているギョンジョン(イ・スンジュン)、親たちも悩みが尽きない。なお、スンヒョの両親は初回と最終回では、同じ夫婦とは思えないほど関係性が変化するのだが、その変わりようから俳優たちの芸達者ぶりには感嘆せずにはいられない。
 
さらに、「愛の不時着」のソ・ジヘが、スンヒョの元恋人役で登場。スンヒョと共に仕事をすることになり、ソンニュが嫉妬するきっかけをつくることに。とはいえ、恋敵というより、2人の恋を後押しする存在。ソンニュとはタイプの違う、物分かりが良すぎる魅力的な役柄だった。
 

前半はやきもきする展開も、後半に盛り返す

本作は、心温まるヒューマンラブストーリー「海街チャチャチャ」(21年)の脚本家と監督の再タッグということで、放送&配信前は人間ドラマとして期待はかなり大きかった。しかしながら、前半は、かたくなに過去を明かさないソンニュ、温厚な性格なはずがソンニュには子どもじみた態度を取るスンヒョ、ついつい外面を気にしてしまうミスクなど、各キャラクターの極端な言動が目立った。物語も進展しているのかどうなのかわかりづらく、それぞれのキャラクターの悩みも解決する気配がなく、かなりやきもきさせられることに。
 
それでも、後半になるにつれて家族のドラマやラブストーリーが盛り返していき、それぞれがしあわせに落ち着くところに落ち着いた。大団円であれば、多少のことも気にならなくなり、たまっていたフラストレーションも和らぐのだから不思議だ。それに、チョン・ソミンは勝ち気な役が合っていたし、そんな彼女に振り回されながらも、彼女が好きでたまらないチョン・ヘインの笑顔の破壊力も半端なかった。やはり、ラブストーリーの結末と、俳優たちの相性というのは重要なのだと実感させられる作品であった。
 
あくまで個人的な意見だが、チョン・ヘインとチョン・ソミンの共演でラブストーリーであるならば、奇を衒(てら)うような物語ではなく、ラブコメ要素たっぷりで気軽に見られる内容でもよかったのでは、と疑問が残ってしまったのは否めない。
 
Netflixシリーズ「となりのMr.パーフェクト」は独占配信中

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ライター
梅山富美子

梅山富美子

うめやま・ふみこ ライター。1992年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映像制作会社(プロダクション・マネージャー)を経験。映画情報サイト「シネマトゥデイ」元編集部。映画、海外ドラマ、洋楽(特に80年代)をこよなく愛し、韓ドラは2020年以降どハマり。

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