「宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました」©️2022 HOME CHOICE CORPORATION,SIDUS CORPORATION,TPS COMPANY ALL RIGHTS RESERVED

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2023.12.26

相手の価値観、尊重する大切さ「宝くじの不時着 1等当選くじが飛んでいきました」:英月の極楽シネマ

「仏教の次に映画が大好き」という、京都・大行寺(だいぎょうじ)住職の英月(えいげつ)さんが、僧侶の視点から新作映画を紹介。悩みを抱えた人間たちへの、お釈迦(しゃか)様のメッセージを読み解きます。

英月

英月

北朝鮮との国境、北緯38度線にある韓国軍の監視所に勤めるチョヌ(コ・ギョンピョ)はある日、1枚の宝くじを拾います。なんとそれが1等、日本円で言えば6億円に当選。しかしふとしたはずみでくじが北朝鮮側に飛んでいったことから大騒動に巻き込まれ、気づいたら人質として北朝鮮軍に送り込まれるはめに。素性がバレれば命が危ないのに、思わぬことから手柄をあげ、まさかの大出世。北の兵士たちとも友情が芽生え、おまけにロマンスまで始まってしまいます。南北問題の緊張感をベースに描かれる、コメディー映画です。

さて、北朝鮮と韓国は国が掲げる理想や目標、そして思想が違います。つまり価値観が違うものの出会いが象徴的に描かれているともいえます。これは私たちの日常でもよくあることで、残念ながら、相手の価値観を否定するようなこともしばしば起こります。そして当然ながら、自分がいる方は常に「正しい」のです。韓国の立場で撮られたこの映画でいえば、北朝鮮の政治体制や思想はダメで、その国に生きている人たちは可哀そうな存在と描かれていそうなもの。その人たちと仲良くなったチョヌは、「正しい国」である韓国で一緒に暮らそうと、彼らに脱北するよう促すことを考えてもおかしくありません。でも、ひと味違う展開でした。

自分が正しいと信じることを相手に勧めるのではなく、相手が大事にしているものを、たとえ自分は共感できずとも尊重する。それは、相手を本当に大事に思った関係かもしれません。そうして築かれた人間関係は、自分の「正しさ」を押し付けたものとはまったく違う新しい何かを生み出すのではないでしょうか。チョヌの姿からそんなことを思いました。

12月29日から東京・新宿武蔵野館、大阪・なんばパークスシネマほかで公開。

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ライター
英月

英月

えいげつ 1971年、京都市下京区の真宗佛光寺派・大行寺に生まれる。29歳で単身渡米し、ラジオパーソナリティーなどとして活動する一方、僧侶として現地で「写経の会」を開く。寺を継ぐはずだった弟が家出をしたため2010年に帰国、15年に大行寺住職に就任。著書に「二河白道ものがたり いのちに目覚める」ほか。インスタグラムツイッターでも発信中。Radio極楽シネマも、好評配信中。

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