「チャートの裏側」映画評論家の大高宏雄さんが、興行ランキングの背景を分析します

「チャートの裏側」映画評論家の大高宏雄さんが、興行ランキングの背景を分析します

2021.5.06

チャートの裏側:映画界は「補償」の要求を

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

4都府県に及ぶ緊急事態宣言下のゴールデンウイーク興行が過ぎた。限定的な映画館の休業だったが、興行への影響は計り知れない。東京都内ではミニシアターなどへの休業協力の示唆もあった。新作の延期も続いた。宣言前、映画界は補償などを巡って声を上げた。当然である。

「るろうに剣心 最終章The Final」は、休業にならなかったスタート2日間だけを見れば、興行収入50億円超が狙えた。若い客層が目立つ。明治初期の日本の混沌(こんとん)ぶりが、奇態な異国情緒を醸す。時代の非限定性の中にロマンの薫りがあり、若者を引き付けている気もした。

ここで考えることがある。シネコンなどとともに、作品を提供する配給会社への補償の必要性である。「るろうに剣心」はもちろんのこと、上映中の多くの作品が、興行収入の目減りを余儀なくされている。延期となり、宣伝の仕切り直しを強いられた会社も負担が増える。

映画館、配給会社をはじめ、広範囲な補償の要求について、映画界はもっと声を大にしていい。都内のシネコンをメインに作品を上映していたある洋画配給会社は、目減り分が大きすぎるため、早晩、その作品を配信へ移す算段をしている。応急措置だが、致し方ない。会社の存亡がかかっているのだ。影響は、まさに広範囲に及んでいる。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)