彼女  Aiko Nakano/NETFLIX c 2021

彼女 Aiko Nakano/NETFLIX c 2021

2021.4.15

時代の目:彼女 常識も倫理も突き破り

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)。

少女漫画原作の恋愛映画で胸キュンの巨匠などと呼ばれるらしい広木隆一監督だが、ヒリヒリした心身の痛みを伴う性愛にこそ本領があった。今の日本映画界だと痛々しい恋愛は歓迎されないようで、撮る時も低予算で遠慮気味だ。そんな中でネットフリックス配信映画の本作は、流血も性描写も堂々と描いた同性愛ロードムービー。広木監督が持ち味を存分に発揮し、今年屈指の1本である。

美容外科医のレイ(水原希子)は、高校の同級生七恵(さとうほなみ)から10年ぶりに連絡を受け、パートナーの誕生祝いを放り出して会いに行く。夫の虐待を告白する七恵の求めに応じて夫を殺害、2人の逃避行が始まった。

レイが全てを捨ててしまう導入は、唐突で極端すぎて面食らう。しかしレイと七恵の因縁が明かされ、2人の鬱屈と屈折が示されるにつれて、破滅的で刹那(せつな)的な行動に共感のチャンネルが開いてゆく。映像も音楽も重厚で、主演の2人も熱演。常識も倫理も突き破って離れがたく結びつく姿に、胸を突かれるだろう。作り手の意欲とそれを満たす条件がそろえば、ここまでできる。日本映画界にカツを入れる、重厚濃密な情念映画だ。2時間22分。ネットフリックスで独占配信中。(勝)

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