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2023.12.15
反応するポイントの違いとは?「ゴジラ−1.0」オーストラリア鑑賞記&オーストラリアの映画館事情リポート
日本でも大ヒット中の「ゴジラ−1.0」の国外での公開が始まった。現在住んでいるオーストラリアで鑑賞した際の観客のリアクション、そして現地の映画館の様子などを紹介する。
「ゴジラ−1.0」は、ゴジラ生誕70周年記念作品。戦後の日本に突如ゴジラが現れ、残された人々がどう立ち向かうのかが描かれる。神木隆之介、浜辺美波、山田裕貴、青木崇高、吉岡秀隆、安藤サクラ、佐々木蔵之介と豪華キャストが名を連ねた。
エスカレーターの深さからも大きさがうかがえるIMAXメルボルン=梅山富美子撮影
世界で2番目に大きいIMAXシアターで鑑賞。ゴジラの知名度はあり
本作を鑑賞したのは、オーストラリア・メルボルンにある映画館「IMAXメルボルン」。スクリーンは一つのみだが、高さ23メートル、幅32メートルと世界2番目に大きいIMAXシアターだ(世界最大のIMAXシアターはシドニーにある「IMAX Theatre Sydney」)。
12月の2週目の平日午後6時の回を鑑賞したが、当日午後にオンラインでチケットを購入した時点でプレミアシートは完売。席も7割は埋まっているという人気ぶりだった。ちなみに、朝の情報番組で新作映画として本作が紹介されたりもしていたが、事前に現地の人に「ゴジラを知っているか?」と尋ねると、「映画は見たことはないがゴジラは知っている」という人がほとんど。それでも、新作が公開されると伝えると興味を持つ人もいた。
映画館内は、デジタルサイネージで上映中の作品や今後のラインアップが紹介され、「ゴジラ−1.0」「君たちはどう生きるか」(12月7日公開)もあり、まるで日本の映画館にいるような不思議な感覚になった。
日本の大手シネコンと同じように上映10分前からシアター内に入場可能。購入時のQRコードをチェックされ中に入ると、目の前に飛び込んでくる世界最大級のスクリーンの大きさに圧倒されるばかり。上映前には「ウォンカとチョコレート工場のはじまり」「アクアマン/失われた王国」といった予告が流れ、「マッドマックス:フュリオサ」(監督のジョージ・ミラーはオーストラリア出身)の予告で観客の集中力が一気に上がったような空気になった。
〜以下、本編の内容に触れています〜
シリアスなシーンでなぜか笑いが。スマホを見る人もおらず集中して鑑賞
客席はほぼ8、9割埋まっており、東宝のロゴが出てきていよいよ「ゴジラ−1.0」の上映がスタート。割と早い段階でゴジラが登場すると、「oh!」と驚きの声が漏れた。会話劇ではしばしば笑いが起こり、一番の爆笑が起こったのは、主人公の敷島浩一(神木)が、お金を稼ぐために戦後処理の特殊任務で乗る特設掃海艇「新生丸」が頑丈な船ではなく木造だとわかったシーンだった。また、水島四郎(山田)、秋津淸治(佐々木)との軽快なやり取りにも笑う人が多くいた。
シリアスなシーンでなぜか笑いが起こることも。飲み屋で敷島が野田健治(吉岡)に頭を下げる場面や、終盤の敬礼のシーンで驚きの声とわずかな笑い声が聞こえた。海外での映画鑑賞経験はわずかなため比較することは難しいが、それでも、上映中に会話をする人やスマホを見る人もおらず、海外で映画を見たなかでは一番、観客が終始集中して映画を見ていたように感じた。
また、日本の映画を海外の映画館で見るのは初のことだったのだが、音声はオリジナルの日本語のまま、英語の字幕というのはこれまでにない体験で新鮮だった。ただ、英語の文字が小さく若干読みづらかったのか、字幕を読もうと前に身を乗り出して字幕を読んでいる人もいた。
本編が終わりエンドロールが始まった瞬間にシアター内の明かりがつき、劇場スタッフも清掃を始めたため促されるように退場。感想を語り合いながら劇場を後にする人々の姿が印象的で、「最後の女の子の首の痕はなんだったの」「日本のゴジラはエモーショナルだったね。ハリウッドのはモンスターアクションって感じだけど」といった感想が聞こえてきた。ゴジラのテーマをオペラ調に歌いながら陽気に帰る人もおり、鑑賞後の高揚感が伝わってきた。
チケット料金が記載されたサイネージ=梅山富美子撮影
誰と見るかや目的によって選べる豊富な選択肢がメルボルンの映画館の魅力かも
同館のスクリーンは一つだが、1日約6本ほどさまざまな作品が上映されている。最新の映画だけでなく、12月は「ポーラー・エクスプレス」「ダイ・ハード 4K」とクリスマスシーズンに合わせたラインアップや、IMAX向けのドキュメンタリー映画などが上映されており、目的に合わせて作品を楽しむことができそうだ。
なお、チケット料金は作品によって異なるが、同館の新作映画はプレミアシートが49.50オーストラリア・ドル(約4,720円)、一般が33ドル(約3,150円)、子どもは22ドル(約2,100円)。火曜日は割引でプレミア席が38.5ドル(約3,670円)、一般が22ドル(約2,100円)、子どもが20ドル(約1,910円)。オンラインで事前に席を予約したのだが、席の予約代が2ドル(約190円)だった。
ほか、チケット購入時にポップコーンとドリンクのセット(Lサイズ16ドル、スモールサイズ12ドル)も事前に購入しておくことができ、コンセッション(売店)でQRコードを見せればその場で注文して支払う手間が省ける。コンセッションでは、ポップコーンやスナック、ドリンクを販売。ペットボトル600ミリリットルの水は4ドル(約380円)と日本の感覚でいうとやや割高に感じるかもしれない。
ほかのメルボルン市内のシネコンは、映画館によって料金設定が異なり、一般が22.5〜24.5ドルといったところ。ただし、座席の種類、スクリーンの形態によって変わるようで、割引デーがあるところも。
例えば、シネコン「HOYTS」には、特別仕様のシアターが数タイプある。上映前にラウンジでくつろぐことができ、高級ベルベットソファ仕様で全12席しかないシアターや、ゆったりとした席で料理や飲み物を注文でき、席まで届けてくれるサービスなどが行われているシアターも(45ドル/約4,290円)。
また、映画の上映だけにとどまらず、同館のサイトには、プライベート上映会、バースデーパーティーや学校イベント、チャリティーイベント、企業イベントでレンタル可能と記載されている。どのような目的で、誰と何を見たいのか、何をしたいのかによって映画館に行く選択肢が増えることは、映画館にとっても利用者にとっても良いことなのかもしれない。