「Renaissance: A Film by Beyoncé」上映前のスクリーンに映し出されたビジュアル=梅山富美子撮影

「Renaissance: A Film by Beyoncé」上映前のスクリーンに映し出されたビジュアル=梅山富美子撮影

2023.12.19

「Renaissance: A Film by Beyoncé」は劇場の新たな可能性を予感させる:オーストラリア鑑賞リポート

梅山富美子

梅山富美子

ビヨンセのライブツアーを追ったドキュメンタリー映画「Renaissance: A Film by Beyoncé」が、初週全米1位を記録した。12月21日から日本でも公開される本作を、現在住んでいるオーストラリアの映画館で一足先に鑑賞した様子を紹介する。

本作は、ビヨンセが今年5月から10月まで行ったワールドツアー「ルネッサンス」の豪華絢爛(けんらん)なライブステージ映像に、舞台裏やビヨンセとスタッフのインタビューなどが織り込まれたドキュメンタリー映画で、監督はビヨンセ自身が務めた。

「ルネッサンス」ツアーはワールドツアーと銘打っているが、公演はヨーロッパと北米のみ。日本にいたっては、ビヨンセの来日公演は2009年以降行われていない。本作は、〝レア化〟するビヨンセを、世界のファンが堪能できる貴重な機会なのだ。


「Renaissance: A Film by Beyoncé」キービジュアル

パフォーマンスが始まると、少しずつノリノリな空気感に

本作を鑑賞したのは、オーストラリア・メルボルンにある「ACMI(オーストラリア映像博物館)」内にあるシアター。平日午後7時の回で、390席のスクリーンが20〜40代の男女を中心に6〜7割ほど埋まっていた。

本編が始まり、ビヨンセが登場しても思わず声が漏れてしまう人が数人というほど静かに鑑賞していた観客だったが、パフォーマンスが始まると体でリズムを刻む人がちらほら。興奮しながらも小声で友人と話すなど、マナーを守りつつも思い思いの鑑賞をしている様子だった。

ただ、ビヨンセに魅せられシアター内の空気は少しずつノリノリになっていき、「スウィート・ドリームス」のパフォーマンスではビヨンセの歌唱に合わせて観客が合唱し、「ブレイク・マイ・ソウル」でビヨンセが会場の観客にマイクを向ける場面では自然とコールアンドレスポンスが起こり、「ラン・ザ・ワールド(ガールス)」では拳を控えめに上げる人も。人気曲では、ほかの観客の邪魔にならぬように通路に出てノリノリで踊る人が2人いるというほほ笑ましい光景があった。

また、舞台裏の映像では、ビヨンセの知られざる素顔を映し出す。疲弊した姿、ノーメークでリハーサルを行う様子や、ツアーでパフォーマンスをした愛娘ブルー・アイビーに対する思いを語る母親としての一面、そして「私は人間、ロボットではない」といった言葉など、スーパースター、ビヨンセのめったに見ることができない姿が収められている。

さらに、ビヨンセが舞台裏で時々ジョークを飛ばすのだが、そのユーモアあふれる姿に笑いが何度も起こった。ビヨンセのカリスマ性は多くの人に知られているところだが、チャーミングな魅力も持ち合わせていることを知ったファンは、これ以上ない〝沼〟へと引きずり込まれることだろう。


「Renaissance: A Film by Beyoncé」より © 2023 PARKWOOD ENTERTAINMENT

今年は、本作やテイラー・スウィフトのコンサートフィルムもオーストラリアで大ヒット

本編が終わると、陰で努力を重ねて、ステージでスターであることを改めて証明したビヨンセへの賛辞のように、大きな拍手が湧き起こった。余韻を味わいたいところだが、ほかの映画と同様にエンドロール中に明かりがともり、観客はエンドロール中に帰って行った。

ちなみに、本作を鑑賞したのは公開2週目だったが、初週に比べメルボルン市街地の上映スクリーン数はかなり減っていた。また、今回は座席指定がなく自由席だったのだが、上映が開始してから来場するお客さんが多数おり、席に着くまでにまごつくことも。案内する劇場スタッフは中央付近の空いている席を勧めるので、人が前を通るたびに鑑賞を中断しなければならなかった(集中して鑑賞したい人は事前に中央の席に座るのがベスト)。

なお、本作のチケット代は24.5オーストラリア・ドル(約2,330円)、事前の予約代が1オートラリア・ドル(約95円)だった。映像博物館内にあるシアターのため、シネコンのようなグッズ販売、飲食販売のコンセッション(売店)はなく、建物内にはカフェ兼売店があり、ドリンク(アルコール提供もあり)、スナック、マフィンなどの軽食を売っていた。

今年、本作のように劇映画以外で世界の映画館を盛り上げたのは、テイラー・スウィフトのコンサートフィルム「テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR」で、彼女のライブツアー「THE ERAS TOUR」の様子を映し出したものが世界で大ヒット。

ドキュメンタリー映画である「Renaissance: A Film by Beyoncé」と比較することは難しいが、ソロの女性アーティストの最高のパフォーマンスを見るために、多くの人が映画館に足を運んだということは、映画館で新たな上映フォーマットが増える可能性を示したのかもしれない。

「Renaissance: A Film by Beyoncé」は12月21日(木)より公開。

ライター
梅山富美子

梅山富美子

うめやま・ふみこ ライター。1992年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映像制作会社(プロダクション・マネージャー)を経験。映画情報サイト「シネマトゥデイ」元編集部。映画、海外ドラマ、洋楽(特に80年代)をこよなく愛し、韓ドラは2020年以降どハマり。

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  • 「Renaissance: A Film by Beyoncé」上映前のスクリーンに映し出されたビジュアル=梅山富美子撮影
  • オーストラリア・メルボルンにある「ACMI(オーストラリア映像博物館)」の外観
  • オーストラリア・メルボルンにある「ACMI(オーストラリア映像博物館)」のエントランス
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