毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。
2022.4.22
「カモン カモン」
ラジオジャーナリストの独身男ジョニー(ホアキン・フェニックス)が、ひょんなことからロサンゼルスに住む妹の息子ジェシー(ウディ・ノーマン)の面倒を見ることに。しかし9歳の甥(おい)っ子との共同生活は、予測不能のトラブルの連続。それでも少しずつジェシーと心を通わせたジョニーは、彼をニューヨークでの仕事に同行させるが……。
「20センチュリー・ウーマン」のマイク・ミルズ監督が、実生活で父親になった経験を投影したヒューマンドラマ。前述の2都市にデトロイト、ニューオーリンズを加えた四つの街で撮影し、米国の多様な〝今〟を端正なモノクロ映像に収めた。さらに〝未来〟についての質問に子供たちが率直に答える記録映画風のパートを挿入。人と人とのつながりにとどまらず、よりよき世界のありようを模索する作品となった。いとおしく、すてきな瞬間もいくつかあるが、主人公と甥の交流劇が少々つかみどころがなく起伏が乏しいのはマイナス点。1時間48分。東京・TOHOシネマズ日本橋、大阪・TOHOシネマズ梅田ほか。(諭)
ここに注目
「ジョーカー」で鬼気迫る演技を見せたホアキン・フェニックスが、優しさともろさを持ったジョニーを繊細に好演。録音のために他人の声に耳を傾けることは、他者を受け入れることに他ならない。孤独や生きにくさと折り合いをつけようとする姿が、映像に溶け込んでいた。(勝)