©2023 HEARTTREE

©2023 HEARTTREE

PRナカチカピクチャーズ

2024.1.24

「境界線を溶かすチョコレート」を作る、田口愛インタビュー「巡る、カカオ~神のフルーツに魅了された日本人~」

公開映画情報を中心に、映画評、トピックスやキャンペーン、試写会情報などを紹介します。

青山波月

青山波月

バレンタインまで後1カ月を切った。バレンタインの思い出といえば、小学生の時に板チョコを刻んで湯煎でチョコを溶かしていたら母が、「じれったいな、お湯入れちゃえばいいじゃん」と溶かしていたチョコに直でお湯を入れてきたことだ。あれは衝撃だった。
 そんなもうすぐバレンタインでたくさん見かけるだろうチョコレート。皆さんは、普段食べているチョコレートがどこで生産されて、どのように作られているのかご存じだろうか。

境界線を溶かすチョコレート

現在公開中のドキュメンタリー映画「巡る、カカオ~神のフルーツに魅せされた日本人~」では、チョコレートの原料であるカカオの歴史、栽培する農家の人々、そしてカカオの可能性に魅せられ奔走する日本人の姿を追っている。今回は、密着した出演者の1人で、「境界線を溶かすチョコレート」を作る、田口愛に話を聞いた。


ガーナの人々にしかない素敵なこと

幼い頃からチョコレートが好きで、19歳の頃に単身でガーナを訪れたことをきっかけに、カカオ産業の発展に尽力している田口。MAAHAというチョコレートブランドを作り、カカオ生産からチョコレートの製造・販売まで行っている。映画の中では白いTシャツを着ているにもかかわらず、ちゅうちょなく池の中に入っていきカカオ農園に猛進していく姿がとてつもなく印象的だった。「ただ、チョコレートが好きだからという理由で、人はここまで夢中になれるのですか・・・・・・!?」という私の問いに対して、「始まりは好きという気持ちだけだったけれど、実際にガーナを訪れてガーナの人々や国が大好きになりました。彼らにしかないすてきなことを伝えたい」と語っていた。貧困や紛争など、負の側面に目を向けられがちなガーナ。「助けたい」と思うことは良いことだけど、現地の人々が何を大切にしているのかを知ろうともせずに一方的な援助をするだけして短期間で帰ってしまう人をガーナの人々は何人も見てきた。田口は、そんなガーナの人々を深く理解するために、活動を始めた最初の数年間はただひたすら現地の人々と同じ生活を送ることを徹底したそうだ。「支え合って生きている彼らから私たちが学ばせてもらう」。そのリスペクトを持つ心が、遠く離れた日本とガーナを結びつけていた。

カカオの高品質高価格化

この映画で、田口をはじめ、出演者の方が口をそろえて言っていたのが、カカオの高品質高価格化。この映画を見れば、カカオを栽培することがどれだけ大変で、カカオ農園がどれだけ過重労働をしているかというのが分かる。大量生産、大量消費の現代で、私たちは気軽にチョコレートを食べている。田口自身も地元の岡山にいる時はチョコレートのルーツを知る由もなく食べていたそうだが、身近に多くいた岡山の野菜生産者を意識した時に、大好きなチョコレートのことを何も知らないまま食べ続けて良いのだろうかと感じたそう。いざ、ガーナに赴いて目撃したのは、政府によって取り決められた質より量のカカオ生産。貧困が深刻なガーナでは、チョコレートの原料であるカカオを栽培しているにもかかわらず、チョコレートを買える人がいないのだ。私たちはチョコレートがどのようにできているのかも知らずに気軽に食べているのに、生産者本人たちが完成したチョコレートを食べられないなんていう理不尽があって良いのかと、私はこの映画を通して無知だった自分に憤りを感じた。田口は、ガーナ政府と交渉し、品質の高いカカオ豆を高価格で買い取りができる制度を確立させるためにMpraeso合同会社を大学2年生の時に設立。「援助によらない持続的発展モデルの確立」という目標のもと、クラウドファンディングで工場を建て、現地の女性の雇用や教育に力を入れているそう。先ほども述べたように「助ける」という一方的な援助で終わらず、今後のガーナの暮らしをより良いものに変化させようと手を取り合って構築していく姿は、次世代の産業モデルのあるべき姿なのだと感銘を受けた。

 

やりたいと思ったことをやる行動力

「今の時代、何かを始めることは特別じゃない。活動を広げていく人へ応援メッセージを届ける」と映画の中で語っていた田口。22歳の私と3歳しか年が変わらないのに、どこからその行動力は生まれるのか質問してみると、「ガーナと日本の仕事に対する価値観の違いに私自身も変えられた」との答えが。日本では、自分で何かを始めるということがとても大ごとに感じるが、ガーナはみんなが個人事業主。やりたいと思ったことをやる行動力はガーナで培ったそうだ。同年代で何かを始めてみたいのに一歩目が踏み出せないと感じている人がいたら、この映画を通して何かを始めてみる際の「気軽さ」も時にはあって良いじゃないと伝えたい。そして、田口がもう一つこの映画を通して伝えたいことが、自分の身の回りにある物のルーツを気にしてみること。チョコレートだけではなく、食べ物でも、日用品でも、文化でも、何から生まれているのかをちょっと調べてみることで、自分を囲んでいる世界がグローバルにつがっていることに気付けるはず。国境を超えた名も知らない誰かに生かされているんだという「リスペクト」と、お互いを理解しようとする「歩み寄り」。「暮らす」ということに直結している大事な心得を田口から教えてもらった。

 

ポジティブに変換する

最後に、「海外で仕事する上で大切なマインドを教えてください」と個人的な質問をさせてもらった。というのも、私も今年大学を卒業してからワーキングホリデーで海外に移住する予定なので、海外で活躍する先輩からアドバイスを得ようという魂胆だ。そこで聞いた面白いエピソードがガーナの「芋事件」。現地で工場を建設している際、建設予定地の土の中から芋がたくさん採れ、想定外の収穫に現地の人々は大喜びして、なんとそのまま帰ってしまったそう。これからカカオの価値を上げていくぞ!と意気込み建設を始めた一歩目で、まさかの工事中断。当時は芋に負けたことにショックを受けたそうだが、今となってはそんなささいなことに喜びを感じられる彼らのマインドを学ぼうとポジティブに変換するように。最初はカルチャーや考え方の違いに苦労するけど、ポジティブに捉えて、自分の考え方の一つの肥やしにしようくらいのマインドで生きるのがポイントだと教えてもらった。これは海外に行く際だけではなく、日常でもいろいろな人と関わる上で、すごく生きやすくなるマインドだと感じた。常に「理解しようと努力する」という考えを前提に活動している田口の思慮深さに終始圧倒されたインタビューで、話を聞いていた私側がすごく勇気付けられてしまった時間だった。「巡る、カカオ」。この映画では、田口の他にもカカオの可能性を広げようと活動している日本人の姿が映し出され、カカオに対する関心はもちろん、やってみたいと思ったことをやる行動力を促してくれる、そんな映画だ。映画を見た後にもう一度この記事を読んでいただいたら、より一層田口の言葉が染みるに違いない。現在公開中の「巡る、カカオ」ぜひご覧ください。

ライター
青山波月

青山波月

あおやま・ なつ 2001年9月4日埼玉県生まれ。立教大学現代心理学部映像身体学科卒業。
埼玉県立芸術総合高等学校舞台芸術科を卒業後、大学で映画・演劇・舞踊などを通して心理に及ぼす芸術表現について学んだ。
高校3年〜大学1年の間、フジテレビ「ワイドナショー」に10代代表のコメンテーター「ワイドナティーン」として出演。
21年より22年までガールズユニット「Merci Merci」として活動。
好きな映画作品は「溺れるナイフ」(山戸結希監督)「春の雪』(行定勲監督)「トワイライト~初恋~」(キャサリン・ハードウィック監督)
特技は、韓国語、日本舞踊、17年間続けているクラシックバレエ。
趣味はゾンビ映画観賞、韓国ドラマ観賞。