ひとしねま

2022.7.07

チャートの裏側:今、強く響く「歌に託せ」

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

2位の「バズ・ライトイヤー」は、「トイ・ストーリー」シリーズの登場人物バズが主人公だ。宇宙を駆けめぐる彼の活躍を描く。3日間の興行収入は3億8000万円。まずまずとみる。先のシリーズ近作の圧倒的な興行とは比べない。目標数値はともかく、全く別物だからだ。

バズのキャラクターに好感がもてる。愛嬌(あいきょう)のある穏やかな風貌のままに、ヒーローとしての強さを誇示しない。一人だけ、時間の経過が違うので、ある意味、孤独地獄を生きる。仲間はできるが、孤高感が際立つ。米映画のヒーローは多様で懐が深い。共感度が高いと思う。

5位の「エルヴィス」は、もちろんエルヴィス・プレスリーを主人公にした音楽映画だ。3日間の興行収入は1億5000万円。日本では、エルヴィスの名を知るのは年配者が多い。少々、物足りないスタートだが、致し方ないだろう。ただ、この程度で終わっていい作品ではない。

すご腕のマネジャーとの確執、転変する政治状況などをからめながら、エルヴィスの生い立ちから最期まで、一気呵成(かせい)に駆け抜ける。「世の中が危ないときは歌に託せ」。その言葉が、今の時代に強く響く。エルヴィスの歌声は、ときに激しく、ときに甘い。劇中の女性客ならずとも、思わず叫び出したくなる。「歌に託せ」をかみしめる。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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