「ファミリー・アフェア」 © 2024 Netflix, Inc.

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2024.7.16

50代女性×30代男性の年の差恋愛はロマコメの潮流に⁈ ニコール・キッドマン出演の「ファミリー・アフェア」:オンラインの森

いつでもどこでも映画が見られる動画配信サービス。便利だけれど、あまりにも作品数が多すぎて、どれを見たらいいか迷うばかり。目利きの映画ライターが、実り豊かな森の中からお薦めの作品を選びます。案内人は、須永貴子、村山章、大野友嘉子、梅山富美子の4人です。

ひとしねま

須永貴子

「ニコール・キッドマンとザック・エフロンがラブコメディで恋に落ちる」だと!? Netflix映画「ファミリー・アフェア」(6月28日より配信中)の作品紹介テキストを読み、再生マークをタップした。映画館にまでは見に行かないタイプの作品も、動画配信サービス(=サブスク)ではとりあえず再生してなんぼである。「気軽さ」が売りのラブコメとサブスクは、親和性が非常に高いといえる。
 


ハリウッドスターと16歳年上のシングルマザーの小説家が恋に落ちる

主人公はニコール・キッドマンが演じる小説家ブルック……ではなく彼女の娘、24歳のザラ(ジョーイ・キング)だ。映画プロデューサーを目指しているザラは、ハリウッド俳優クリス・コール(ザック・エフロン)の直属アシスタントとして働いて2年になる。クリスはタイトルロールのスーパーヒーローを演じる「イカロス・ラッシュ」で大スターになったので外面はいいが、ザラにとってはワガママなパワハラ上司であり、真剣な恋愛ができないクソ野郎だ。
 
ザラは映画製作に一切関わらせてもらえず、女性とのデートのセッティング、別れる際に渡すジュエリーの手配、真夜中の買い出しなどの雑用ばかりでうんざりしていた。そのタイミングで、自分の上司と母親がベッドにいる光景を目の当たりにしてしまう。
 
予告映像でも切り抜かれているが、そのときのザラのリアクションが最高なのだ。ショックのあまり、食べていたぶどうを喉につまらせて窒息しそうになり、それを吐き出す。そして、逃げ出すようにきびすを返したと思いきや、ドアの縁におでこを思い切り打ち付けて跳ね返るようにぶっ倒れる。この演技力、さすが子役出身の実力派、ジョーイ・キングである。
 
クリスとブルックの恋愛に関しては、今年配信されたAmazon Prime映画「アイデア・オブ・ユー 〜大人の愛が叶うまで〜」のソレーヌ(アン・ハサウェイ)&キャンベル(ニコラス・ガリツィン)と、設定も展開もほぼ一緒。若い女性に大人気のスーパースターが、経済的にも精神的にも自立した年上のシングルマザーと出会い、その知性と美しさに魅了される。そしてセレブの財力によるスーパーリッチなデートシーンで映画を盛り上げ、真剣に愛し合うようになるが……。
 
2人の年齢差が16歳というところまで、「アイデア・オブ・ユー」とかぶっている。ザラの「彼は20歳年下」という非難めいた発言を、ブルックが「16歳ね」と訂正するシーンがある。実際にはニコール・キッドマンとザック・エフロンが20歳差であることに基づいた、なんという余裕と遊び心のあるセリフだろう。
 
このやりとりを見て、今後も40〜50代の女性視聴者をターゲティングした、その年代の女性と年下男性の恋愛を描くラブコメ&ロマコメ映画が、配信作品の潮流のひとつとなっていくことを確信した。
 

自立した40~50代女性と年下男性のロマコメが、配信映画のひとつの潮流に?

そしてカップルは、の前に立ちはだかる障害に立ち向かっていく。「アイデア・オブ・ユー」の障害は世間の非難の声だったが、今回のそれはザラである。ちなみに「アイデア・オブ・ユー」では、ソレーヌの娘は全面的に母たちの恋愛を応援する最大の理解者だった。
 
上司と母親の情事を目撃してしまったザラに、視聴者はまずは同情するだろう。親のセックスなんてものは見るものじゃない。とはいえ、親にもセックスする権利はある。それなのにザラは、クリスがひどい人間であるという理由を盾に別れを要求し、その権利すらも奪おうとした。それは明らかにやりすぎだ。
 
相思相愛のブルックとクリスの関係に、なぜザラは24歳にもなって反対するのか? 追って解き明かされていくその理由は、ザラの今後の人生のためにも、解決しなければいけないコンプレックスと関係していた。
 
一方のクリスは、部下のザラや交際した女性たちに対する、過去の自分のふるまいに足を引っ張られることになる。クリスは決して、わめき散らすタイプの暴君ではない。スーパーヒーローとしてブレクした自分のイメージが壊れ(てファンを傷つけ)ることを恐れるあまり、身動きが取れなくなっている、繊細で真面目な人間なのだ。
 
心配性ゆえ、アシスタントであるザラへの要求がエスカレートし、恋愛をしても相手の女性が自分の知名度や財力を目当てにしていると邪推し、自ら別れを告げてしまう。すさまじい肉体改造で驚かせた「アイアンクロー」でもそうだったが、ザック・エフロンの役柄への多面的で献身的な(そして出しゃばらない)アプローチが、この映画の輝きとなっている。
 
個人的に、本作はニコール・キッドマンとザック・エフロンのロマンスよりも、ジョーイ・キングとザック・エフロンのある種のバディーものとしての側面に魅力を感じた。それを象徴するのがラストシーンだ。2人のコミカルなやりとりの絶妙さと、カメラワークを含めた着地の美しさに、ぜひ注目してほしい。
 
Netflix映画「ファミリー・アフェア」は独占配信中

ライター
ひとしねま

須永貴子

すなが・たかこ ライター。映画やドラマ、TVバラエティーをメインの領域に、インタビューや作品レビューを執筆。仕事以外で好きなものは、食、酒、旅、犬。

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