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2024.10.14
法で裁かれない悪に制裁を! 復讐代行を請け負うチームの活躍を描く「復讐代行人2 ~模範タクシー~」
法で裁かれない悪に制裁を下す復讐(ふくしゅう)劇「復讐代行人 模範タクシー2」がU-NEXT他で配信されている。表向きはタクシー会社、実態は犯罪被害者から依頼を受け復讐を代行する「ムジゲ運輸」。シーズン1の最後にチームは解散したが、この度メンバーたちがカムバックした。
「復讐代行人 ~模範タクシー~」より ©SBS
主演は引き続きイ・ジェフン。キム・ウィソンら前作メンバー再集結
主演は引き続き元陸軍士官学校特殊部隊将校、現ムジゲ運輸のタクシー運転手、キム・ドギ(イ・ジェフン)。復讐計画を練るムジゲのブレーンであり、持ち前の身体能力の高さを生かして突撃隊も務める。母親を事件で失った過去を持つ。
クールなドギが家族のように大切にするのがムジゲの面々。社長のチャン・ソンチョル(キム・ウィソン)、ハッカーのアン・ゴウン(ピョ・イェジン)、エンジニアのチェ・ギョング(チャン・ヒョクジン)とパク・ジノン(ペ・ユラム)。みんな陽気で明るく、普段は和気藹々(あいあい)とした掛け合いが楽しいが、それぞれが大切な人を亡くした傷を負っている。
シーズン2から新たに加わったオン・ハジュン(シン・ジェハ)はムジゲの新入社員。普通のタクシー運転手として就職したが、ひょんなことから本業に気づく。
豪華カメオを含め、キャストが魅力的だ。特にソンチョル社長役のキム・ウィソンが「善人」を演じる姿が目新しい。キム・ウィソンと言えば、一癖も二癖もある不気味な悪役のイメージしかないと言っても過言ではないからだ(「アルハンブラ宮殿の思い出」や「ミスター・サンシャイン」「シュルプ」を思い出してほしい)。
シーズン1では「いつドギたちを裏切るか」と期待したが、最後まで社員を思い、社会正義に燃えていた。拍子抜けというより、新たな魅力発見といったところか。
「復讐代行人 ~模範タクシー~」より
平等ではないことへの怒りがあふれている
カメオ陣も必見だ。「ペントハウス」でのキレ芸が光ったキム・ソヨン、「わずか1000ウォンの弁護士」などで知られる名優ナムグン・ミン、「宮廷女官チャングムの誓い」のイ・ヨンエらが特別出演する。
1話目の依頼人は行方不明になった息子を捜す父親だ。警察からは、息子が成年しているからという理由で捜査を拒まれていた。絶望して橋から身を投げようとした瞬間、足元に「模範タクシー」のシールを発見する。ソンチョル社長は、人が自殺をするとみられるあらゆる場所にこのシールを貼っていたのだ。
法律に代わって一個人が悪を暴き、犯罪者を裁くドラマは少なくない。背景には、公権力への猜疑(さいぎ)心や怒りがある。例えば、「ヴィンチェンツォ」(2021年)は検察への底なしの不信感を、「ザ・グローリー ~輝かしき復讐~」(22~23年)は処罰を逃れる特権階級を描いた。
本作も同様に、公権力や万人に対し平等ではない法に対する怒りがあふれている。本作のユニークさは、タクシーという身近な乗り物がヒーローであること、しかもヒール代表格のような役者であるキム・ウィソンが正義の味方として暗躍している点だろうか。
「復讐代行人2 ~模範タクシー~」」はU-NEXT他で配信中