「ゴジラ-1.0」がヒット街道をばく進している。山崎貴監督は1954年公開の「ゴジラ」第1作を強く意識し、終戦直後の日本に「戦争の象徴」としてのゴジラを登場させた。初代ゴジラの生みの親の一人、本多猪四郎監督が1992年10~11月のロングインタビューで語った半生と映画への思いを、未公開の貴重な発言も含めて掲載する。「ゴジラ-1.0」を読み解く手がかりとなるコラムと合わせて、どうぞ。
2024.3.07
淡路島でゴジラほえる! 〝迎撃作戦〟に参加してみた 1泊5万6000円のゴジラルームとは⁉
「ゴジラ-1.0」(山崎貴監督)の大ヒットで、さまざまな場所が活気づいているが、意外なことに兵庫県・淡路島がその一つだ。北部の淡路市に現れた巨大な「ほえるゴジラ」が、観光客を集めているという。大きな口を開けたその姿が世界に拡散され続け、〝聖地化〟が進んでいるらしい。行ってみた。
神戸からバスで橋を渡って淡路島「ニジゲンノモリ」へ
高さ23m、体長120m、実物大⁉
神戸市・三ノ宮のターミナルから、バスで淡路島を目指す。車内でも外国語が飛び交っている。大阪や京都の観光地のようだ。筆者は7年前ごろからたびたびこの路線を利用しているが、ずいぶん外国人観光客が増えたなあ、と思う。
バスに揺られること45分、淡路島に降り立つ。古くから和歌に詠まれることの多い美しい島で、百人一首に登場することでも有名。海と山の景色を楽しみつつ、県立淡路島公園の中を進む。徐々に、地面に伏せたゴジラの姿が見えてきた。伏せた、といっても相当な大きさに驚く。高さ23メートル。長さは(一部は地中に潜っている、という設定ではあるが)約120メートルに及ぶ。口を大きく開け、威嚇するようにこちらをにらむ姿はかなりの迫力だ。よく見るとワイヤにつかまって滑走するジップラインが引かれ、口に飲み込まれるようにその中に進めるようになっていることが分かる。
「ゴジラ迎撃作戦」の建物。中に入ると「ゴジラの口の中に飛び込む」などのミッションを指示される
「ニジゲンノモリ」の人気アトラクション
ここは淡路島公園の中にあるテーマパーク「ニジゲンノモリ」(貞松宏茂社長)。「クレヨンしんちゃん」「NARUTO」「ドラゴンクエスト」などさまざまなアニメ・映画・ゲームのコンテンツを活用した、多彩なアトラクションが用意されている。その中でもゴジラをテーマとした「ゴジラ迎撃作戦」は異彩を放つ。なにしろ巨大で、人目を引く。アトラクションとしては淡路島に上陸したゴジラを迎え撃つという設定で、ジップラインでゴジラの口に飛び込む活力のある遊びだ。それ以外にもシューティングゲームに臨んだり、特撮について展示するミュージアムなどを巡ったりと、子どもから大人まで楽しめる。
「ゴジラ迎撃作戦」は20年に開設された。2023年11月に「ゴジラ-1.0」が日本で公開され、12月の米国公開を皮切りに世界中の映画館でも大ヒットして、改めて国内外の関心を集めることになった。なにしろ「等身大の」(というのも変だが)ゴジラを眼前に見ることができ、その口に入れる(!)のだから。
クッションにも怪獣。ゴジラルームは怪獣がいっぱい
1泊5万6000円のコラボルームも予約殺到
23年12月1日にはニジゲンノモリ内にある宿泊施設「GRAND CHARIOT 北斗七星135°」内に〝ゴジラコラボルーム〟がオープンした。一室限定で「怪獣ランド」と称し、歴代ゴジラ映画をテーマとしている。1人1泊約5万6000円という、ちょっと驚くような料金でも、年末年始はいっぱいになる人気だった。
一つの部屋なのに〝ランド〟というだけあって、大変な凝りようだ。歴代のゴジラに登場した怪獣たちの写真が室内にずらりと並び、ゴジラ好きなら「キングギドラはどこにいるかな」などと探す楽しみがある。壁だけでなく、飛ぶ怪獣は「天窓」にいたりもする。怪獣の写真・装飾が光の当たり方によって見え方が異なるので、昼と夜で部屋の感じが変わったり、部屋に隠された「ミッション」をクリアするとグッズがもらえたりといった遊び心もある。マニアを喜ばせるだけでなく、普通に親子連れでも楽しめるルームになっている。高額設定でも人気が続いているのは、そのあたりの工夫が受けているようだ。
淡路島は古くから愛されている観光地だが、集客の面では「冬」は課題だった。名物である農作物の収穫期には当たらず、とにかく海風が冷たい。広大な淡路島公園の魅力を生かせる時期ではないのが常だった。その中で、今年のゴジラの大健闘は収穫だ。
島活性化にチャレンジ中
ニジゲンノモリの親会社である、人材総合企業のパソナグループは淡路島への本社移転を進める。今年5月までに東京本社の管理部門を中心に約1200人を淡路島に移す計画は、大詰めを迎えている。淡路島を「世界一豊かな島にしたい」という南部靖之代表の雇用創出や地域創生の企画の中で、ニジゲンノモリは重要なパーツとなっている。
新旧さまざまなコンテンツが魅力を発揮している「モリ」の中で、「ほえるゴジラ」は、年齢や国籍に関係なく多くの観光客に人気のあるコンテンツだ。季節を超えて、人を集められることが改めて示された24年冬。「壮大な実験」とも評される大移転計画が進むそばで、ニジゲンノモリでは、この勢いに乗って新たなアトラクションの計画が次々に立てられているという。東京一極集中の是正を掲げた静かな島での大きなチャレンジ。ほえるゴジラの快進撃とともに、注目され続けている。