「私がやりました」© 2023 MADARIN & COMPAGNIE - FOZ - GAUMONT - FRANCE 2 CINEMA - SCOPEPICTURES - PLAYTIME PRODUCTION

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2023.10.28

「公正」と「正義」の違い 「私がやりました」:英月の極楽シネマ

「仏教の次に映画が大好き」という、京都・大行寺(だいぎょうじ)住職の英月(えいげつ)さんが、僧侶の視点から新作映画を紹介。悩みを抱えた人間たちへの、お釈迦(しゃか)様のメッセージを読み解きます。

英月

英月

舞台は1930年代のパリ。有名映画プロデューサーが自宅で銃殺されます。容疑者は、売れない若手女優マドレーヌ(ナディア・テレスキウィッツ)。連行された彼女は、ルームメートで新人弁護士のポーリーヌ(レベッカ・マルデール)と共に法廷に立ち、「自分の尊厳を守るために撃った」と正当防衛を主張します。感動的なスピーチは、裁判官だけでなく世論にも訴えかけることに。見事無罪になっただけでなく、悲劇のヒロインとして一躍時代の寵児(ちょうじ)となったマドレーヌは、ポーリーヌと共に豪邸に引っ越します。幸せの絶頂にあったある日、かつての大女優・オデット(イザベル・ユペール)が訪ねてきます。自分こそが真犯人だと言う彼女の手には証拠の品があり、2人が手に入れた富と名声は自分のものだと主張します。

無名の女優にとっては、有名になれる千載一遇のチャンスとして。そして、過去の人となっていた大女優にとっては再起のチャンスとして、「私がやりました」と言い張る。人殺しという犯罪でさえも、自分の得になるなら奪い合ってでも手に入れようとする彼女たちの姿が滑稽(こっけい)ですが、何としてでも犯罪者になりたいオデットは判事に会って直訴までします。「公正に判断して」と証拠の品を提出しますが、「大事なのは公正さではなく正義だ。この二つは違う」と言われます。

公平で偏っていないという意味の「公正」に対して、「正義」には偏りがあります。双方に、それぞれが思う正義がある。だからこそ正義の名のもとに争いも起きるのです。それは自分にとっての得を求めるのと同じ。これが得だ、こっちが正義だと判断する基準は、自分の都合であり思いだからこそ、時と場合によって変わることもあり、他者を傷付けることもあると、改めて気づかされました。

11月3日から東京・TOHOシネマズシャンテ、大阪ステーションシティシネマほかで公開。

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ライター
英月

英月

えいげつ 1971年、京都市下京区の真宗佛光寺派・大行寺に生まれる。29歳で単身渡米し、ラジオパーソナリティーなどとして活動する一方、僧侶として現地で「写経の会」を開く。寺を継ぐはずだった弟が家出をしたため2010年に帰国、15年に大行寺住職に就任。著書に「二河白道ものがたり いのちに目覚める」ほか。インスタグラムツイッターでも発信中。Radio極楽シネマも、好評配信中。

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