「仏教の次に映画が大好き」という、京都・大行寺(だいぎょうじ)住職の英月(えいげつ)さんが、僧侶の視点から新作映画を紹介。悩みを抱えた人間たちへの、お釈迦(しゃか)様のメッセージを読み解きます。
2022.2.27
英月の極楽シネマ:グッバイ、ドン・グリーズ! ちりばめられた言葉の“宝物”
「さあ、宝物を見つけにいこう。」がキャッチコピーのこのアニメ映画は、少年たちのひと夏の冒険物語。関東の田舎町に暮らすロウマ(声・花江夏樹)、医者になるために東京の高校へ行った秀才のトト(声・梶裕貴)、そして、アイスランドからやってきた無邪気なドロップ(声・村瀬歩)の3人が、ひょんなことから山火事の犯人に間違われてしまいます。潔白を証明してくれるのは、自分たちが花火撮影のために飛ばし、行方不明になってしまったドローン。彼らは森の奥へ捜しに行きますが、もちろんキャッチコピーの〝宝物〟はドローンではありません。では、彼らにとっての宝物とは?
分かっているようで分かっていないのが、自分にとっての宝物。何が大事なのかということです。皆さんの宝物は何ですか?
さて、この映画には、心をつかまれる言葉の表現がたくさん出てきます。例えば「写真」を「もう二度と訪れない一瞬を永遠にしてくれる」もの、といった具合。その言葉は当然、私にかけられたものではありませんが、私には響きました。言葉は受け取った人のところにあるのです。同じように登場人物たちも、言葉を受け取り、そして力を得ていきます。なぜなら、見えないさまざまな思いや願いが、文字や音になったものが言葉だからです。言葉を受け取るとは、願いを受け取ること。この映画には、そんなすてきな言葉だけでなく、たくさんの伏線もちりばめられています。それが最後に回収されて〝宝物〟が明かされる様は爽快です。TOHOシネマズ梅田ほかで公開中。(真宗佛光寺派・大行寺住職)