欧州連合(EU)各国の最新の話題作、秀作を集めた「EUフィルムデーズ2023」が6月2日、東京・京橋の国立映画アーカイブで開幕する。日本未公開の作品を中心に、なかなか見ることができない国の最新作もそろえたヨーロッパ映画の大規模な特集上映だ。今年は開催20周年の節目となり、昨年に続きEU加盟全27カ国が参加。東京・京都・広島・福岡の4会場を巡回する。今回は昨年加盟候補国となったウクライナの「ルクセンブルク、ルクセンブルク」など2作品を特別上映するのも目玉の一つ。EU加盟前の国の作品を上映するのは極めて珍しい。
世界中の人たちに共通するテーマ
今回のコンセプトは「映画でつながる、ヨーロッパ」。全30作品中、19作品が日本初上映になる。<家族、この複雑なるもの><さまざまな愛、さまざまな友情><女性たちの奮闘><越境して働く、社会の中で生きる>など七つのカテゴリーに分けて、世界中の人たちに共通するテーマの作品を披露する。EU各国の新たな魅力やそこで生活する人たちに接し、知る格好の機会になりそうだ。
日本で過去に上映された作品には、米アカデミー賞で多くの部門にノミネートされたアイルランドの「イニシェリン島の精霊」やカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品されたイタリアの「シチリアーノ 裏切りの美学」、今年のドイツ映画祭で好評だった「フェモクラシー 不屈の女たち」など高評価の作品が並ぶ。
注目度の高い3作品
具体的に日本未公開の作品の中から注目度の高い3作品をピックアップしてみよう。1本目はポルトガルの「Terra」。ポルトガル語で土、陸地、地球、故郷など多様な意味がある言葉で、鈴木仁篤とロサーナ・トーレスの共同監督3作目。2018年にリスボン国際ドキュメンタリー映画祭国内映画部門の最優秀賞を受賞した。アレンテージョ地方にある土で覆われた二つの大きな窯。1人の男が炭を焼く。世界を形作る火、水、風、地、空の要素は大地のリズムを映し、呼吸する。ポルトガルの田舎で自然とともに暮らす人々の姿を描いた作品だ。1時間。
2本目はスロバキアの「Let There be Light/光あれ」。チェコのカルロビ・バリ国際映画祭で主演男優賞、エキュメニカル審査員賞など、各国の映画祭で受賞が相次ぎ高い評価を受けた作品。ミランが出稼ぎ先のドイツからクリスマス休暇で帰郷した日の夜、長男アダムの同級生が列車に飛び込む。少年グループ内のいじめが原因と思われ、ミランはアダムの関与を疑い仲間から遠ざけようとするが、一家は次第に嫌がらせの対象になってしまう。ある村を舞台に、外国人への嫌悪、宗教的偽善、嫉妬、極右の台頭などの社会問題を重層的に描いた。1時間33分。
3本目はスペインの「とにかく見にきてほしい」。アカデミー外国語映画賞受賞作「ベルエポック」(1992年)の名匠フェルナンド・トルエバ監督の息子で、トゥールーズ・スペイン国際映画祭監督賞受賞など各国の映画祭で注目されるホナス・トルエバ監督作品。エレナとダニエルはクラシックのコンサートで再会した友人カップルがマドリードを離れて郊外に移住すると聞き、半年後に彼らのもとを訪ねる。マドリードが大好きな友人カップルは地方の街で暮らして幸せか、新しい環境で満足しているか問いかける。1時間4分。
来日ゲストによるトークやオンライントークも
このほか、自閉症の息子が親離れし自立していく過程を描いたオランダの「ケースがはばたく日」、21年の東京オリンピック、フェンシングで3度目の金メダルを獲得したシラーギ・アーロン選手と代表チームを追ったハンガリーの「一人はみんなのために」などのドキュメンタリー。いたずら好きのネズミと引っ込み思案のキツネの友情を描いたチェコのパペットアニメーション「ネズミは天国がお似合い」なども上映される。また、一部の作品では、来日ゲストによるトークやオンライントークも予定している。
開催時期と場所は、東京・国立映画アーカイブ(6月2日から30日)、京都府京都文化博物館(6月20日から7月23日)、広島市映像文化ライブラリー(7月21日から8月5日)、福岡市総合図書館(8月9日から27日)。
詳細はこちら→https://eufilmdays.jp/