少しずつ日が暮れていく会場=梅山富美子撮影

少しずつ日が暮れていく会場=梅山富美子撮影

2023.12.31

夏のオーストラリアの風物詩、ムーンライト・シネマ「ラブ・アクチュアリー」鑑賞リポート

公開映画情報を中心に、映画評、トピックスやキャンペーン、試写会情報などを紹介します。

梅山富美子

梅山富美子

南半球にあるオーストラリアは12月から夏。この季節にぴったりな野外で映画を上映するイベント「ムーンライト・シネマ」がオーストラリア5都市で開催中ということで、イベントの様子をリポートする。12月はクリスマス向けの映画がラインアップされており、鑑賞したのは公開20周年を迎えた「ラブ・アクチュアリー」だった。
 

(左上から時計回り)まだ日が高い時間の会場の写真、少しずつ日が暮れてゆく様子、上映少し前のだいぶ日が落ちてきた会場、フードやドリンクも販売されている=梅山富美子撮影

思い思いのスタイルで見る、野外映画上映イベント「ムーンライト・シネマ」

野外上映イベント「ムーンライト・シネマ」の歴史は四半世紀以上と長い。野外での映画上映にビジネスの可能性があると考えた起業家ジェームズ・タトンが、ビジネスパートナーのポール・チオドと共に1995年12月〜96年3月にオーストラリア・メルボルンで「ムーンライト・シネマ」をスタートさせた。
 
同イベントは成功し、翌年(96〜97年)にはシドニーでも開催。現在は、映画やイベント運営の会社が主催しており、メルボルン、シドニーのほか、アデレード、パース、ブリスベンと5都市に拡大し、夏の夜のイベントの一つとして知られている。
 
チケットの購入方法はオンラインのみ。事前に一般席(26オーストラリア・ドル/約2500円)を購入したが、その時点ですでに特典付きのチケットは完売していた。ちなみに一番高いチケットは、ウエーターが飲食のサービスをしてくれる、2人掛けのソファ席で250オーストラリア・ドル(約2万4000円/2人)。お手ごろ価格とは言い難く、特別な日仕様といったところ。
 
筆者が行ったのは、メルボルンの会場であるメルボルン王立植物園内の中央芝生広場。東京ドーム約8個分の広さを誇る同植物園で、午後7時30分の閉園時間を過ぎても園内にいるのは「ムーンライト・シネマ」の観客のみ。そのためほかの観客に従うと、迷うことなく会場入りできた。
 
会場に到着したのは上映開始の約1時間前だったが、すでに多くの人で埋め尽くされにぎわい前方にはスクリーンが設置され、非日常の空間が広がっていた。一晩で約1000〜1500人を集客するという「ムーンライト・シネマ」の一般席は、先着順に席を確保するシステム。そのため着くとすぐに空いているスペースにブランケットを広げた。なお、日本でよく見かける青や緑のレジャーシートは一切見かけず、ブランケットや椅子を持ち込む人がほとんどだった。
 
同イベントは、食事や飲み物(アルコール類も)が持ち込み可能で、特にピザの箱を抱える人をよく見かけた。ワゴンカーではフードやドリンクが販売されており、上映までは食事をしたり、寝転んでまったりしたりと、思い思いにくつろぐ姿があった。
 
上映は午後8時45分予定のはずが、午後8時41分の日没時点でまだまだ辺りは明るく予定時間になってもスクリーンに映し出された「ムーンライト・シネマ」ロゴもやっと見える程度。しばらくたってから上映が遅れるというアナウンスがあり、9時すぎにやっと始まったかと思えば広告の動画が15分弱続き、9時15分ごろようやく本編が始まった。それでも観客は特に何も言わず、ただのんびりと過ごして暗くなるのを待っていたのが印象深い。
 

「ラブ・アクチュアリー」より © 2003 WT Venture LLC. All Rights Reserved.

クリスマス映画として知られる「ラブ・アクチュアリー」。普遍的に愛されているのを体感

 鑑賞した「ラブ・アクチュアリー」は、ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、キーラ・ナイトレイ、エマ・トンプソン、コリン・ファース、故アラン・リックマンなど豪華キャストが出演した、英ロンドンでのさまざまな人間模様を描いたロマンティックコメディー。クリスマスシーズンを舞台にしていることから、クリスマス映画としても知られている。
 
上映では、コメディーシーンでは大きな笑いが起こった。特にコリン・ファース演じるジェイミーが登場するシーンの反応が大きく、湖に落ちるように飛び込む場面では一番の笑いが起こり、改めてコリン・ファースの魅力を感じることも。
 
また、20年前の作品ながら、ほぼすべてのシーンで観客のリアクションが大きく、登場人物たちに一喜一憂する姿が新鮮だった。さすがにサラ(ローラ・リニー)の携帯、マーク(アンドリュー・リンカーン)のハンディーカメラやビデオテープ、そしてキャストの服装やメークなど、象徴的に登場するものは物理的に時代の流れを感じることもあったが、普遍的な人間の悲喜こもごもが描かれた本作は時代を超えて愛され続けているのだと体感した。
 
ちなみに、メルボルンは夏といっても、夜間は12〜14度まで冷え込むこともしばしば。ダウンを着ている人も多く、ひざ掛けやブランケットを持って完全防備で鑑賞している人が多かった。また、上映終了が午後11時を過ぎる可能性が高く、海外の夜道は気をつけたほうが良いだろう。
 
なお、本作を見に行ったのは12月19日。「ムーンライト・シネマ」では、クリスマスシーズンに「ホーム・アローン」「エルフ 〜サンタの国からやってきた〜」がラインアップされている。
 
また、「プラダを着た悪魔」「グーニーズ」「フェリスはある朝突然に」といった懐かしの映画から、「バービー」「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」と今年のヒット作、そして年明けには「フェラーリ」「ネクスト・ゴール・ウィンズ」「The Iron Claw」「ARGYLLE/アーガイル」といった最新作も上映され、幅広い時代、ジャンルの映画が上映される。
 
メルボルンの「ムーンライト・シネマ」は12月1日から来年3月30日まで実施。オーストラリアの夏の夜を大いに盛り上げてくれそうだ。
 
<画像使用作品>

「ラブ・アクチュアリー」
Blu-ray:1815円(税込み)
発売元・販売元:KADOKAWA

ライター
梅山富美子

梅山富美子

うめやま・ふみこ ライター。1992年生まれ。日本大学芸術学部映画学科卒業後、映像制作会社(プロダクション・マネージャー)を経験。映画情報サイト「シネマトゥデイ」元編集部。映画、海外ドラマ、洋楽(特に80年代)をこよなく愛し、韓ドラは2020年以降どハマり。

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  • まだ日が高い時間の「ムーンライト・シネマ」会場の写真
  • フードやドリンクも販売されている「ムーンライト・シネマ」会場
  • 少しずつ日が暮れてゆく「ムーンライト・シネマ」の様子
  • 少しずつ日が暮れてゆく「ムーンライト・シネマ」の様子
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