「チャートの裏側」映画評論家の大高宏雄さんが、興行ランキングの背景を分析します

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2021.9.09

チャートの裏側:アクションと物語が融合

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

「シャン・チーテン・リングスの伝説」という見慣れない題名の作品がトップに立った。「アベンジャーズ」などで国内人気も定着してきた米国の映画スタジオ、マーベルの堂々たる娯楽大作だ。中国大陸を舞台に、ずば抜けた肉体技を身につけた青年がヒーローとして活躍する。

これが、なかなか面白い。コミックを原作に、敵対する勢力などと戦う米映画のヒーローものは、ときにアクション過多になることもある。それが、本作はアクションと物語が鮮やかに融合する。親子をめぐる因縁話が、シェイクスピア劇やギリシャ悲劇にも通じる。

配給はディズニーだ。同社は今年、娯楽大作中心に劇場公開と配信の同時展開を続けてきた。ところが、本作は公開中の「フリー・ガイ」と同じく、劇場優先とした。これで、同社作品の上映を控えていたシネコンも多数加わり、700スクリーンを超える劇場シフトができた。

「シャン・チー」は、ディズニーとしては今年初めて、最終の興行収入で10億円以上の数字が見込めるスタートだ。知名度が高いマーベル作品ではないので、30億円、40億円というわけにはいかないが、この時期の他の洋画よりは安定感がある。ただ、配信開始時期はこれまでより早くなるという。興行との兼ね合いが気になるところである。(映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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