幼い頃に父親がタリバンに連行され、残された家族と祖国からの脱出を試みたアミン。家族と離れ離れになりながらもデンマークに亡命し、研究者として働いている。そんな彼が高校時代からの友人である映画監督に、これまでの人生を告白していく。
今年の米アカデミー賞で史上初となる国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞の3部門にノミネートされる快挙を果たした作品。監督は登場人物が特定されると危険だという理由から、アニメーションで実話を描く手法を選択した。場面によってタッチが変わり、実写ではないからこそ主人公たちがたどってきた道のりの過酷さがより色濃く伝わる。
戦争によって居場所を失う人々がいる状況は図らずも現在と重なり合い、言葉を失うような場面が続く。けれども同性愛者であるアミンが抱くスターへの憧れや旅の途中の出会いをさりげなく描く場面に、この世界へのほのかな希望がともる。ヨナス・ポヘール・ラスムセン監督。1時間29分。東京・新宿バルト9、大阪・梅田ブルク7ほか。(細)
ここに注目
ドキュメンタリーとアニメーションの境界を取っ払い、融合の特性を生かした。実写のリアリティーと悲惨さ、作画が生み出す人と人、家族や友人のぬくもりなどを巧みに織り交ぜたラスムセン監督のバランス感覚が秀逸。アミンの声と言葉にはその何倍もの苦悩が宿る。(鈴)