ひとしねま

2022.9.30

データで読解:市場に熱もたらした夏

毎週公開される新作映画、どれを見るべきか? 見ざるべきか? 毎日新聞に執筆する記者、ライターが一刀両断。褒めてばかりではありません。時には愛あるダメ出しも。複数の筆者が、それぞれの視点から鋭く評します。筆者は、勝田友巳(勝)、高橋諭治(諭)、細谷美香(細)、鈴木隆(鈴)、山口久美子(久)、倉田陶子(倉)、渡辺浩(渡)、木村光則(光)、屋代尚則(屋)、坂本高志(坂)。

「ONE PIECE FILM RED」が8週連続1位で、興行収入は156億円、動員者数も1100万人を超えた。大作の公開が集中する夏は年間総興収を大きく左右する。2022年はコロナ禍前のレベルに戻った、非常に力強い興行であった。5位の「トップガン マーヴェリック」は5月公開から異例のロングランヒット中で興収128億円を超え、10位の「ジュラシック・ワールド 新たなる支配者」も62億円を超えた。

コロナ禍前から30%以上減少していた映画参加者人口(年に1本以上映画館で映画を見る人の数)は5月から8月にかけて毎月増加。4月比で9.4%増え、特に8月は前月比4%増。さまざまなジャンルから大ヒットが多数出た結果である。また、下落が続いていた年配層や「恋人・夫婦で」「子供と」映画に行く層でも増加したことは好材料だ。

人々を劇場に向かわせるのは作品の訴求力だが、その行動自体に習慣性がある。久しぶりに映画館に来た人が多数いたことが今後の作品を後押しする。秋にも中規模作品が多く公開され、冬に向けてはリマスター版がランクインした「アバター」の続編や新海誠監督の新作、人気漫画「SLAM DUNK」の劇場版など期待作が控える。引き継がれるべき市場の熱をもたらした夏だった。(GEM Partners代表・梅津文)